ここはロマンス大通り【ars】 (ページ7)

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じゅんじゅんに時間外営業して

彼が帰ってから11時に開店して。

お昼時にはカウンターは毎日そこそこ埋まる。
大体、満席。

小さな町だし、小さな店だからそんな超繁盛！って訳じゃ無いけど、常連さんは有難いことに居る。

そんな常連さんの中の二人が、お昼のピークを過ぎた頃にやって来た。

「おじさーん、ラーメン。あー腹減ったー。早くラーメン！」
「智さん、こんにちはー」

口の悪い顔は可愛い男の子と、オシャレで人懐っこい女の子。

「ニノちゃん、言葉遣いを正さなきゃラーメン作らないよ？」
「うっわ...親父にも言われた事無いのに！！」

某ロボットアニメの主人公の真似をしながら、カウンターに座ったニノちゃんがAちゃんに「早く座ったら？」って手招きしてる。

どうやら、この二人。
最近、付き合い始めたらしい。

こないだAちゃんが一人で食べに来て、報告してくれた。
でも実はAちゃんに聞く前から、ニノちゃんの気持ちは知ってたんだけど。

『おじさん。あんた、婚約者いんだからAにチョッカイ出すな』って牽制された。

初めて会った時はまだ高校生だったニノちゃんも、そんなコト言っちゃうようになったんだなぁ...なんておじさんはちょっと感動したりして。

おれはAちゃんの恋心がどこにあったかってのも失恋したのも知ってたから、ニノちゃんの想いは伝わるかな...って心配もしてたけど

若者には若者の距離のつめ方があるんだろうね。
良かった良かった。

「なぁに、ニヤニヤしてんのよ」

ニノちゃんが頬杖をついて、おれをジトーっと見てる。

「幸せそうで良かったねぇ」
「はぁ！？何がっ！」

あ。耳真っ赤になった。

「Aちゃん、苦労するねぇ」
「あ、分かって貰えます？」
「分かる分かる」

ニノちゃんが「早くラーメン作って！」ってカウンターをダンダンって両手で叩く。
子供みたい。

「二宮くん、それダメ！」
「え？」
「行儀悪いの、私すっごいやだ」
「...ごめん」
「......」
「A、許して？」

そっぽ向いてるAちゃんの背中をトントンして不安そうな顔してるニノちゃん。

彼に顔を背けてるAちゃんがニヤニヤしてるのがおれには見えて、思わず吹き出してしまう。

「仲良いねぇ」

出来上がったラーメンをカウンターに二つ並べる。

「仲良いよ。だからAにチョッカイ出すなよ？」

ニノちゃんが、またおれを牽制して

Aちゃんは、ちょっと嬉しそうに俯いた。