ここはロマンス大通り【ars】 (ページ29)

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■ミックスジュースをふたりで。ページ29

まさか...

まさかまさか...

「青天の霹靂とは、まさにこの事...！！」

日曜の昼下がり。

頭を抱えながらへなへなと床に座り込む。
漫画みたいな台詞をわざと口に出したのは、気を紛らわす為。

...って、気を紛らわしてる場合じゃない。

...どうする...私...

「あと、半年...も無いよね...」

親戚から間借りしてるこの部屋。
約束ではその期間は5年間だったはずなのに、来年の春には出て行かなきゃならなくなった。

理由は単純。
その親戚んちの御長男が予定より早く留学から帰って来る事になり、ここに住みたいと言ってるからだ...と。

物凄い謝られた。
電話口で、物凄い謝られた。

なんなら「うちの勝手な馬鹿息子には我慢して貰って...」なんて提案までされた。

だけど、さすがに「あーじゃあ、そうして貰えますぅ？」なんて言えない。
赤の他人だったら言えたかもしれないけど、相手は小さな頃から盆や正月には必ず顔を合わせてる親戚だ。
帰って来る御長男も、兄妹みたいに仲良くしてた従兄弟なんだ...言えない...言えやしない...。

絶望感の中

「大丈夫！家くらい見付けられるよ！逆にこんな良い部屋を貸してくれてありがとう！」

私の口は、嘘半分本音半分で応えてた。

『こんな良い部屋を貸してくれてありがとう！』は本音。
嘘なのは『家くらい見付けられるよ！』の方。

「敷金礼金とか、おいくら程かかるんだろう...」

まだそんなにお金貯まってないよ...。
ロマドーから出て行きたくないから、この近所で見付けなきゃ...。

名前がダサくても何気に凄く便利なロマドー。
お家賃もどう考えたって、安くはない。

「んー...とりあえず不動産屋さん、行ってみるか！」

悩んでたって、落ち込んでたって、絶望してたって仕方無い！
確か、交番の近くに不動産屋があったはず。

ついでに潤さんに、宿無しになるかも案件を話を聞いて貰おう。

「...あ、そうだ！」

私は、ついさっきまで親戚のおばさんと話してたスマホを出して、電話をかける。

ワンコールで相手が出てビックリ。

「はぁい？」
「出るの早くない？」
「スマホゲームしてたんだもん。邪魔されたの、Aに邪魔されたの」
「はいはい、ごめんね？」

二宮くんは相変わらず、口を開けば憎まれ口。

だけど

「A、今うちに居るの？」
「うん」
「じゃあ、オレんちおいでよ。電話する位なら、顔が見たい」

ンフフと笑って、舌っ足らずなあの声で嬉しい言葉を言ってくれる。

くっそー。