ここはロマンス大通り【ars】 (ページ22)

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翔さんの部屋は、本人の言う通り散らかってる。

でも、決して汚れてるんじゃなくて物が散乱してるだけ。

「あつー...」

とりあえず言われてたし、クーラーを入れる。

この散らかってるモノ達を片付けたい衝動に駆られるけど、翔さんは散らかってる中でもどこに何があるか把握してるみたいだから触れない。

私はソファに腰掛けて、その辺にある雑誌だけ集めてテーブルの上に乗せた。
その中から何となく1冊手に取ると、大阪のグルメガイド。
パラパラと捲ってみる。

何ヶ所かページの端が折ってあって

翔さんこのお店に行きたいんだー、もう行ったのかな？なんて考えるだけで、楽しい。

そうやって雑誌を読んだり、テレビをつけてみたりしてると

玄関のチャイムが鳴った。

「あ...そっか」

私に鍵を渡しちゃってるから、自分で開けられないんだ。

急いで玄関に走って、ドアを開けると

「ただいま」

当然なんだけど、翔さんがそこに居た。

「おかえりなさい！」
「あ、良いな。『ただいま』に返事があるのって」

そんなの、私がいくらでも『おかえりなさい』って言うよ。

「ってゆーか静香、お前さっき何の確認もせずにドア開けたろ」
「...あ」
「俺がもし暴漢だったらどーすんだよ。ドア開けた瞬間、襲いかかられるぞ？」

...それも良いな...なんて思った私に、翔さんは

「まぁ、俺も時が来れば襲うけども」

真顔でそう言いながら、部屋に入って来た。

破壊力...ドキドキして、ちょっと苦しい。

「そう言えばさぁ、静香仕事は？」
「んー、有給貰ったの」
「連絡くれたら良かったのに」
「ビックリさせたくて」
「まぁビックリしたけどさぁ」

翔さんが私に背を向けた状態で、Tシャツを脱ぎながら話す。

綺麗な背中。

「翔さん」
「んー？」
「...迷惑だったかな...？」
「は？」

振り返って上半身裸のままで、私の前まで歩いて来た翔さんが「お前さぁ」って少し不機嫌そうに言った。

「どこの世界に遠距離中の彼女が会いに来てくれて『迷惑だ』なんて言う男が居んだよ」

ちょっと強めに手を引っ張られて

翔さんの胸の中に閉じ込められる。

「俺はビックリした、っつったの。迷惑なんて言ってないでしょうが」
「.....うん」
「来たのが今日なのは、狙っての事？」
「え...？」

少しだけ引っ付いてた身体を離して

「今日が、七夕だから？」

そう言った翔さんが、私の唇を掬うようにしてキスをした。