ここはロマンス大通り【ars】 (ページ3)

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なのに何だよ！

何なんだよ！！

想定外の事に、オレは頭を抱えた。

親父に頼まれてたパースを描いて、もう寝よっかなー...って思ってた深夜。

雅紀がうちにやって来た。

深夜に雅紀が来るのなんて、珍しい事じゃない。
だから、特に何も気にせずドアを開けたんだけど...雅紀の様子はちょっといつもと違った。

「今...良いかな...」
「無理って言っても上がるんだろーが」
「...おじゃまします」
「気持ちわり。何なの」

少し前に「失恋したぁ」って来た時は、もう既にグズグズに泣いてたけど

その時とも、何か違う微妙な顔して微妙な態度。

ラグに座ってクロの背中を撫でながら雅紀は、チラチラとソファに座るオレを見る。

「何だよ、言いたいコトあんだろ？」
「んー...」
「無いなら帰れ、今すぐ帰れ。オレ、寝るとこだったの」
「あるっ！...聞いてくれる？」
「勝手に話せや、耳だけ貸してやるよ」

オレがジーッと見てたら話しづらいだろーと思って、雑誌をパラパラやりながら聞いてやった。

「あのね、ニノ...」
「うん。どったのよ」
「俺さぁ...押し倒しちゃったんだよねぇ...」
「誰を」

失恋直後だから酔っ払ってナンパしたオンナノコとでもヤッちゃったのかなー？ってさ。
根が真面目な奴だから、後悔してんだろーなーって。

そう思ったんだけど。

「大切な女友達...押し倒しちゃった、んだよ」

待て待て待て...それって...

「あ、押し倒しちゃっただけだよ？.....だけでも無いけど...」
「無いのかよ」
「でもっ！えっちはしてない！」
「乳揉んだ？」
「馬鹿っ！揉んでないよ！」

何でオレが馬鹿って言われてんの。

ってかもう、お前それ...

「お互い失恋しちゃって...弱っててさ...」

はい、確定ー。
お相手確定しましたー。

そもそも、雅紀が『大切な女友達』なんて言うの1人しか居ないし。

「でもね！ちゃんと話して、無かった事にはしないけどこれからも友達で居ようねって」
「…そんなの出来んのかよ...」
「出来るよ、だって本当に友達だもん」

お前はそう思ってるかもしんないけど、Aは分かんないじゃん。

この無駄にイケメンで、無駄に爽やかで、無駄に優しくて、無駄に真面目な雅紀をAが好きになったらどーすんだよ！

「クソが...」
「え？何？」
「簡単にオンナ押し倒してんじゃねぇよ！バカじゃねぇの！？」

この怒りなのか焦りなのか分からない気持ちの処理の仕方が分からなくて、気付いたら雑誌の端っこ破ってた。