ここはロマンス大通り【ars】 (ページ16)

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俺を罵るどころか、俺だけにこんな問題を抱えさせてごめんねって謝ってまでくれた。

女の子なのに、どうしてこんなに強いの？って。
どうしてこんなに、優しいの？って。

そう思ったら、男の俺が泣いちゃって。

全然、いやらしい気持ちも無くAちゃんを抱きしめてしまった。

不思議だった。
女の子を抱きしめる時は、愛おしいとか大好き！とかそーゆー気分になった時だけだと思ってたのに。
何か自然にAちゃんを抱きしめてた。

...ちょっと違うな。

俺が抱きしめて貰ったんだ。

優しく背中をポンポンと叩いてくれて、何だか子供の頃とーちゃんに叱られて泣いてる俺を抱きしめてくれたかーちゃんを思い出した。
なんて言ったら、Aちゃんは怒るかな？
「私の方が年下なのにかーちゃんって！」って。
あ、言いそう。

そして、「無理して笑わなくって良いよ」って...。

昔、ニノにだけ言われたことのある言葉を言われた。

俺が一番の親友だと思ってるニノ。
まぁ、あっちがどー思ってるかは知んないけど。

とにかく、そのニノと同じ事を言ってくれたAちゃんに、何の見返りも無く単純にずっと友達でいたいって思った。

そんなAちゃんと一度だけ、一線を超えそうになった事があった。

翔ちゃんと静香さんが間違いなく付き合ってるんだって、目の前で思い知らされたあの日。
誰にもバレないように、Aちゃんの手を握った。

彼女の手は、震えてて

俺がギュウって握りしめても、その震えは止まらなくて

Aちゃんを送るって一緒に店を出て歩いてると、空から雨が落ちてきた。

お天気まで、俺らをいじめんの？
もういいじゃん、これ以上。

これ以上、俺らをいじめないでよ。

本気でそう思った。

Aちゃんちまで送って、帰ろうとしたらタオルを貸してあげるって言われて玄関先まで入った。

タオルを持って来たAちゃんは

泣いていた。

今までずっと泣かなくて、強いなって思ってたけど

違ったんだ。
泣けなかっただけなんだ...。

青白い頬にそっと触れると、ほとんど感情が無いような目で俺を見る。

その目の下を親指で撫でると、少しだけ驚いたような顔になる。

「これ、雨じゃないね...」

俺がそう言った瞬間

Aちゃんは小さく嗚咽を漏らしながら、崩れ落ちた。

追いかけるように俺もしゃがみ込んで、その身体を抱きしめて

涙が溢れる瞼に、唇を押し当てた。

そこは、とても熱かった。