Last Scene 明日のFools ページ10
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「Aちゃん、卒業おめでとう！」
「ありがとうございます先輩」
久しぶりにシフトが入っていたその日。
相葉先輩が私の卒業をお祝いしてくれた。
と言っても大げさなものではもちろんなくて、だけど何でもないはずの休憩時間がほんのりと温かな時間になった。
「なにがいいかすごい考えたんだけどさ、ものとして残るのもあれかと思って、お菓子にしちゃった」
「…ありがとうございます」
その気遣いが相葉先輩らしかった。
二宮先生みたいに許せと息のようにつぶやくのではなく。
櫻井先生のようにさよならを告げるのでもなく。
相葉先輩がカバンから取り出したのは可愛らしくラッピングされた小さな箱だった。
「フィナンシェなんだけど、平気だよね？」
「はい、好きです」
「よかった」
安心したように先輩が笑う。
その表情は私の周りにいた櫻井先生や二宮先生、潤くんとはまた違う、安心できるものだった。
やっぱりもう、この人に私みたいな女の子は必要ないだろう。
「大学も行きたいところに行けてよかったね」
「はい。シフトにたくさん穴開けてすみません」
「いいのいいの。それだけAちゃんが頑張ったってことだよ」
相葉先輩はいつも笑顔だ。
私に告白してくれた時なんかいろいろ抱え込んであんまり笑ってくれなかったけど、もうそんなこともない。
形に残らないものを贈ってくれる相葉先輩は、その優しさを当たり前にやってしまう人だ。
だからこそ私みたいな女の子とお別れできてよかったと思う。
どうか先輩が、この先笑顔でいられますように。
そう願ってやまない心は、嘘なんかじゃない。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月6日 16時
