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Last Scene -8 ページ17
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厚みのある唇が弧を描いて、大きな目が少しだけ細められる。
「俺にはこんなやり方しかできない。愚か者だからな、知ってるだろうけど」
愚かなのは櫻井先生だけではない。
それは私だって同じ。
わかっていて好きになった。
わかっていて、放っておけなかった。
わかっていて近づいたのは、きっと私の方。
「俺のやり方に文句言うなよ。……だから、嫌いだって、言ってやろうか」
「……っ」
喉の奥で空気がすれる。
あまりにも甘い顔と声で、先生はそんなことを言う。
指先が冷えて震えだしそうで、それでも必死に言葉を探していたら、先生が困ったように笑う。
「そんな顔すんなよ…少しは頭使え。今日は何日だ」
「え？昨日が三十一日だから今日は四月の……あ」
「学年が変わるのは明日だからな。まだ言ってやれない。でも今日は、言える。…なぁちゃんと答えろよ。嫌いだって、言ってやろうか」
あぁやっぱり、先生は愚かな人だ。
可哀そうで、放って置けなくて、そして…ずるい。
そんなわかりづらいことを、それでも言おうとしてくれる。
私は泣きそうになりながら、それでも何とか頷いた。
「……はい」
小さな声だったけど先生に届いたかな。
……ううん、届いたことは、その顔を見ればわかる。
「ふ…嫌いだよ、お前のことが。ずっとずっと、嫌いだったよ」
「私だって、嫌いでした。私の方がずっと、先生のこと嫌いでしたから」
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月6日 16時
