remember 5 ページ7
草薙が作った弁当を開けた昼食時。遊作がそれに手を出し、口へと運ぼうとすると自分の前に誰かが影を作った。遊作は前を向いてその姿を確認する。そこには見知った人物が立っていた。
｢これ、良かったらどうぞ｣
遊作の弁当の隣にパックのコーヒー牛乳が置かれる。驚いて遊作が前に立つ、Aを見つめれば彼女はいつものように微笑んだ。それを遊作は怪訝そうに見る。Aは首をかしげて、話を繋げた。
｢藤木くん、甘いものは好きじゃないと思ったからコーヒーにしたんだけど…違ったかな？｣
｢……どういうつもりだ｣
｢どういう？強いていえば、前にノート運ぶの手伝ってくれたお礼｣
遊作が弁当横に置かれた、コーヒー牛乳を見つめる。Aが、毒なんて入ってないよ？と見当はずれのことを言うと遊作は大きくため息をついて、礼を言った。自分の恩返しにまた恩を返された。Aはそんなつもりは無いだろう。だが、彼女は如何せん自分の考えにそぐわない行動をとる。
｢ホットドッグ、美味しそうだね｣
にっこりと笑ったAをちらりと見ると、遊作が肯定の言葉をかける。彼女はクラスの中でも不思議ちゃん、と呼ばれる分類の人間ではないか。柄でもないことを遊作が考え、ホットドッグへと手を伸ばした。
｢それ、藤木くんが作ったの？｣
｢……いや、俺の知り合いが作った｣
｢そっか。美味しい？｣
｢見ればわかると思うが、まだ食べてない｣
｢それもそうだね｣
調子が狂う。見つめられて何となく食べづらいと感じた遊作が、手を置けばAが食べないの？と不思議そうにした。遊作は前に居られては食べづらい、と彼女を横の席に座る様に声をかける。Aもそれに黙って従った。
｢……やる｣
｢え、いいよ。藤木くんの食べる分減るよ？｣
｢俺はいつも食べているから気にするな｣
二本あるそれを遊作がAに渡すと、Aは礼を言って受け取る。こんな風に学校で昼食を誰かと食べるのは初めてかもしれない。Aがホットドッグを頬張るのを横目に遊作はいらぬ考えを過らせた。
｢美味しい、藤木くんが言う百倍くらい美味しいと思う。このホットドッグ｣
｢それは良かった｣
目をキラキラさせてかぶりつくAに、遊作はパックのコーヒー牛乳を飲みながら見つめる。
変なやつだとは思う。だが、悪くないと思ってしまう自分もいて。
そんな自分の心境に遊作は軽く戸惑った。
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暁(プロフ) - とても面白いです!!次の更新楽しみにしています!! (2019年10月8日 12時) (
レス) id: dd077ce83e (このIDを非表示/違反報告)
はな - 続き読みたいです！面白かったです (2019年4月16日 1時) (レス) id: 87d0cab806 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナコ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！頑張れ〜恋愛一年生、遊作！ (2019年4月6日 21時) (レス) id: c6a15fa920 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ねこみこさん» コメントありがとうございます。お返事が遅れてしまい申し訳ありません。とても嬉しいお言葉ありがとうございます、ご期待に添えるよう更新頑張ります。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
ねこみこ(プロフ) - とても面白いです更新頑張ってください！ (2018年7月3日 22時) (レス) id: 185c2ad794 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅりんぷ | 作成日時：2017年9月22日 17時
