百合の花を食い破る【鬼滅の刃】

☆ ページ6

「なにそれ」



蜜璃ちゃんの低い声が響いた。


雨が急に降り出して、音で掻き消されたと思ったのに、なのに響いた。




びしょ濡れの蜜璃ちゃんが近付いてくる。



私の肩を掴むと、低い声で私に問う。







「ねぇ、それって私の想いがちゃんと伝わってないってこと？」






「蜜璃ちゃん、痛いよ」





「痛い？それって何処が痛いの？今掴まれてる肩？騙されたって思った心が痛いの？」




「あ、か、肩」





その途端に、押し倒され、褒めてもらったはずの紅色の下駄が脱げて、カラコロと音を立てて水たまりに落ちた。





「Aちゃんは心が痛くないのね？」



痛いの、痛いよ。


私だって、痛い




「私はこんなにも痛いのにっ！」





蜜璃ちゃんが涙をボロボロと溢しながら私に何度も叫ぶ。




「男の人にだってキュンキュンするわよ、でもそれ以前に貴方にしか愛を注げないのに！」




「私がAちゃんを弱いから捨てる？男性恐怖症のAちゃんを利用する？」






「こんなにも好きなのに、愛してるのに、そんなことするわけないじゃない！」





「きっと、届いて…伝わってなかったのね？」





そうやって私に泣きはらした顔を見せると、ちゅうっと首筋に吸い付いた。





「っ、あ、ゃ、蜜璃ちゃん、此処、そとっ」





「ねぇ好きよ」







「はなしきいっ、んっ」





「好きよ」







甘い接吻がチクリと脳を痺れさせた。





蜜璃ちゃんと私の声は、土砂降りで掻き消された。

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