29日目 ページ30
『お疲れさまでしたーお先に失礼します。』
今日の仕事も無事に終わり、なんとか定時退社。
今日は帰ったら卵ふ化厳選して、ストーリー進めて…ジムリーダーの適正レベルいくつだっけ、なんてスマホで調べながら電車に乗り込んだ。
両耳にイヤホン。
聴こえてくるのは愛おしい人の歌声。
これで毎日デトックスをしながら帰るのだ。
私の落ち着いた日常の一部。
きっといつかまふくんの家を出て行って、しっかり元カレになってからもこの歌声は大好きなんだろうなぁ。
会社から一駅先に停車。ここは数人降りる人がいるのを覚えているので、座席の前のほうに立って居ようとほんの少し体を横にずらした。
今日はやけに人が多いな…
ふと青い鳥のつぶやきで遅延情報を見てみると、よく止まるあの路線がまた止まっているらしい。
なるほどなぁとぼんやりまたジムリーダーの情報や、四天王に向かう手持ちを何にしようか調べているとゆるりゆるりと電車が動き出す。
自宅までもうあと2駅。
最寄りの一駅手前に留まって、人が動き出した。
その時だった。
『っは…?』
腰を両手でしっかりつかまれた。
一瞬だったはずの時間。
それが何秒にも思えて動けない。
それだけでは終わらない。
つかんだまま少し横にずらされ、私の右肩甲骨から、右肩、右腕
順に自然に、あたかも人が多すぎてぶつかったように。
いや、不自然に。
体ををこすりつけながら降りていく。
ドアを降りるときにやっと見えた顔は、電車の中でよく見るスーツをきた背の低い40後半くらいのおじさん。
目は、絶対に合わなかった。
.
.
『ただいま!まふくんぎゅーして!』
「おかえりーA!もーどうしたの、今日もお疲れ様』
ふふ、と笑ういつもの笑顔。
まふくんの匂い。
ちゅ、と短いおかえりのキスを大事に受け取る。
じわじわ滲んでくる涙が情けなくて
腰に回るまふくんの腕であの感触を上書きしたくて両腕に力を込めた。
呼応するようにきつく抱きしめられて、後頭部を優しい手が滑っていく。
まだ、消えてくれない。
--------------
作者が実際にされた降車テクニックでした
びっくりしたぁ…
両耳イヤホンながらスマホで同じ時間の電車に乗ってると狙われやすいそうですよ
皆さんもお気をつけて
230人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
宵闇 ルア(プロフ) - もう一回見てみたんですけど、最後のかつて彼氏だった彼の声のところの後に出てきた人はまふくんじゃないかなって思ってます (2023年1月8日 22時) (レス) @page41 id: d7473b096e (このIDを非表示/違反報告)
涙靜(プロフ) - 見つけてくださって、ここまで見守ってくださって、本当にありがとうございました!思い出した頃にまた振り返っていただけたら嬉しいです! (2022年12月6日 23時) (レス) id: 82f86f91ed (このIDを非表示/違反報告)
Ruriyuri - 私いろいろな界隈の小説を読んでいるのですが、とても久しぶりに心に来る小説を見付けました。本当に珍しいことでこのような小説に出会えてとても嬉しいです。とても感動しました。 (2022年12月5日 21時) (レス) @page41 id: 825b0bc841 (このIDを非表示/違反報告)
涙靜(プロフ) - おみさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!泣かせるぞ〜!と思って書いてたので、本望です笑ありがとうございました! (2022年12月1日 1時) (レス) id: 82f86f91ed (このIDを非表示/違反報告)
おみ(プロフ) - 完結おめでとうございます!すごい泣きながら読みました (2022年11月30日 22時) (レス) @page41 id: 284adcf210 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ