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めめside
疲れて眠ってしまった阿部ちゃんの寝顔を見ながら、言われたことを整理する。
俺はあの時、そんなことしてたんだ。
でも別に、そのことで阿部ちゃんを恨もうとか、そんな気持ちは微塵もない。
阿部ちゃんは、思い出したくても思い出せないもどかしさと、思い出した後の絶望を抱えて生きていたんだな…と思うと、俺がそのことに気づけなかったのが悔やまれる。
未だにあの時のことを思い出せない自分にも、腹が立つ。
俺はそもそも階段は使えないから、行ってみようとも思わなかったな。
何より、阿部ちゃんが一人で思い詰めてしまわないかどうかが心配で。
自分を責めているのかもしれないし、むしろその可能性が高いと思う。
「阿部ちゃんは悪くない」ってことを心から理解してもらうには、どうしたらいいんだろう。
結局その日は答えが見つからなくて、モヤモヤした気持ちを抱えていた。
その次の日から、俺は退院することになったけど、阿部ちゃんは経過観察として入院することになった。
元々阿部ちゃんの退院は一時的なものだったのもあるし、体調が悪化するリスクを考えて退院はしないらしい。
一人で康二の家にいても、昨日の阿部ちゃんの顔が浮かぶ。
俺が何かすることで阿部ちゃんを救えるわけじゃないけど、何かしないといけないという使命感みたいなものに駆られて、とりあえず外に出てみる。
その数十分後、俺はある建物の中にいた。
今まで数えきれないほど仕事で来た場所で、たくさんの思い出が詰まっている場所だ。
ここに来たって何か分かるわけじゃないし、そもそも俺がここにいることは誰も知らない。
でも、何か分かるかもしれないという一縷の望みをかけて、俺はエレベーターの前へ行った。
エレベーターの前に貼り紙がしてあったので、気になって読んでみる。
『現在、2階と3階の間の階段は通行止めとなっております。エレベーターをご利用ください』
昨日の阿部ちゃんの話を思い出して、エレベーターで3階まで上がってから、通行止めになっている階段の前まで移動する。
よくドラマで見るような黄色いテープが、手すりと手すりの間に渡されている。
下は電気がついていなくて真っ暗で、踊り場もはっきりとは見えない。
目黒「怖いな」
つい独り言が、口を突いて出る。
阿部ちゃんもどこかで階段を見て、同じような恐怖を感じたのかもしれない。
あの時のことは覚えていなくても、本能的に体が恐怖を感じる。
耐えられなくなって、エレベーターの前までUターンした。
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