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一週間に一回、俺はこの靴を履いて街を歩く。未だに王子様を信じてるなんてと馬鹿にされたことは多かったけれど、逆に王子様がいないなんて根拠もない。

「あぁっご主人様♡よかったら休憩して行きませんかぁ?♡」
「え…?」
「あたし、ずっと待ってたんですよぉ?♡」

メイド服を着てうさ耳を付けた女性に迫られる。いやいや、俺あなた方の店に入ったことないです……。断ろうとするも続々と周りを囲まれてしまって、どうしたものかと辟易していると。

「──すんません、どいてもらえます?」
「…え」
「子供たち通れないみたいなんで」

溶けかけのキャラメルみたいなお兄さんの声。怯えていた小学生グループが、安心した顔になって自転車を漕ぎ出す。子供たちを見守るお兄さんの笑顔は、向日葵のようだった。

「あと、この人困ってます」

いきなり肩を持たれてびっくりしてしまう。この人、俺も助けてくれるつもりなのか。

「ほら、あっちにお姉さん方が気になってるおじさんいますよ」
「あ、本当だ。ありがとうございます。ご主人様ぁー!♡」

猫なで声でおじさん方の元へ行く女性を見送ると、息をついたお兄さんがぱっと離れる。

「あ……ありがとうございました」
「ううん、当然のことしただけなんで」

向かい合うと、ふっと笑うお兄さん。

──間違いない。ダイキ役はこの人しかいない。
佇まい、顔のパーツ、えくぼ、全てにおいて、俺の中のダイキそっくりだ。

「あ、あの。お兄さん」
「ん?どうしました?」
「お茶、しませんか」

いきなりダイキ役やってくださいとか言えなくて、挙動不審なまま、そんなことを口に出していた。

「ナンパなら乗りませんよ」
「ナンパといえばナンパですけど、ナンパのつもりはないので問題ないです」
「え。どゆこと」

どうしよう、ナンパをサラッと躱すあたりも、俺のダイキそのまんまだ。俺の理想の、王子様。

「何者ですか?」
「お兄さんを探していた者です」
「怪しさ増してるの分かります…?」

怪訝そうな顔は、俺が何度も描いた表情にそっくりで、興奮状態が冷めやらぬまま「分かります!」と頷けば、お兄さんは快活に笑った。

「じゃー怪しさ満点の君のナンパに乗ってやる」



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みさき(プロフ) - 初めまして。おすすめに出てきたので一気に読ませてもらいました!赤緑推しにはたまらない短編集ですね!とくに高嶺の緑くん。出会いから追っていきたい2人だなとすごく思いました!推しカップルです笑素敵な作品ありがとうございます! (2023年2月10日 15時) (レス) @page35 id: 06114767fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサレ | 作成日時:2021年9月25日 18時

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