自家製ガラスの靴 ページ5
.
notリアル設定
.
( 緑 )
きっと、白馬の王子様が迎えに来てくれる。そう信じて、早二十年。未だに王子様は来ない。
「神山先生、今回の王子様もバッチリです！」
だから俺は、理想の王子様を作って、漫画にしたのである。既刊五巻の恋愛漫画は、既にアニメ化もしていて全巻の帯に大ヒットなんて文字が付くくらい。内容は、ある日何もかもを失った冴えない女の子が王子様に拾われる話で、完全に俺の願望を詰め込んだもの。
「やはり当て馬なのでしょうか？」
「いや、二人を手助けする立ち位置にしたいんよね。友達にいてほしい、親しい感じ」
「なるほど……」
一生懸命メモをとるこの子は、最近入った新人アシスタント。俺の作品に憧れて、この業界に足を踏み入れたらしい。
「でもやっぱり、私はダイキ様推しですね」
「やっぱり！？俺もなんよ！」
俺の理想の王子様像を詰め込んだのが、ヒロインの本命のダイキ。好きな子には少し意地悪な態度を取るけどふとした時に優しさを見せて、笑顔が向日葵のようなキラキラとした王子様。
「そういえば神山先生、実写化の話が来てますよ」
「え！実写化かぁ……」
四巻の最後に喧嘩したダイキに抱きしめられるシーンがあるから、多分そこまでだろう。いやいや、それにしても。
「…ダイキのキャスト、どうするん」
「神山先生の要望があれば、通してくれるそうです」
誰にすればいいのだろう。今話題の若手俳優？人気者のアイドル？沢山のイケメンが浮かぶものの、何か違うと頭を振って想像を振り払う。
ダイキは絶対、あのままじゃないとダメだ。髪型とか雰囲気とか、眉の形とか目の大きさとか、俺の中でのイメージは固いものとなってるから、少しでも違っていたら実写化なんてしたくない。
「…ちょっと行ってくるわ」
「王子様探しですか？」
「うん、ようやくこれが活躍する時が来た」
最低限の荷物を持って俺が履いたのは、ガラスで出来た靴。スニーカーの形をしていて、俺の靴のサイズより若干大きい。これが脱げてしまった時に、きっとダイキは現れると俺は信じてる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みさき(プロフ) - 初めまして。おすすめに出てきたので一気に読ませてもらいました！赤緑推しにはたまらない短編集ですね！とくに高嶺の緑くん。出会いから追っていきたい2人だなとすごく思いました！推しカップルです笑素敵な作品ありがとうございます！ (2023年2月10日 15時) (
レス) @page35 id: 06114767fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサレ | 作成日時：2021年9月25日 18時
