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「.........極め付けにこれ。」
自嘲気味に笑んで、コトリと壁の弓置きに弓を立て掛けると、結弦の構えた手元が光った。
光を引き絞ろうとすると、シュウ、とその光は消え失せた。
「個性まで効かなくなったんかよ....。」
こくり、と頷くと、結弦はそのまま顔を下げた。
「.......どれだけ、引いてみても、必ず落ちるし、和氣先生に見ていただいても、どの先生に見ていただいても、そこまでおかしな引き方はしてないって。
原因も、わからないし、先週末の試合は
少しずつ、話す声に震えが混じり始める。
「...............私、弓道しか、無いのにね。
このまま、ずっと引けなかったら.......
私、
どうなるんだろうね。」
そう震える声で言って、こちらに顔を向けた。
いつも真っ直ぐで透明な翡翠色は、いつになく光が弱く、代わりに並々と、そこに涙の膜を張っていた。
ボロ、とその膜が決壊し、頰を伝うのに構わず、結弦は無理やり笑んだ。
眉根をぎゅっと寄せ、ぐしゃ、と笑んだ。
自嘲以外の何でも無かった。
いつもどこかひらりと、他人を躱すような、あまり踏み込ませない涼しい顔をしているくせに。
そのくせ毎度自分の思った事はさらと言い返す妙な度胸はあるくせに。
自分の目指すもの、弓道に対しては、周りにどれだけ冷ややかな目で見られても、ただひたすら真っ直ぐ前を向いて進む強さを見せるくせに。
そのくせに、
そんな顔、
すんなや。
眉根にしわが寄る。
なんでこんなに、コイツが泣くと、俺が堪えんだ。
「なァ.....、泣くなや。」
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泉(プロフ) - 白猫さん» なんかすごい策士のようになっていますが笑。私は展開を書いているとキャラが勝手に動く感覚で書いてるので、私も一緒に感情移入しています笑。ありがとうございます!かっちゃんはとても怒られる事ですけどね笑。最後の最後まで、どうぞ見守ってやって下さい* (2019年3月31日 16時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
白猫(プロフ) - 話の流れと言うのでしょうか、、感情の波(?)が綺麗で読みながら緊張したり、安心したり、感情移入させにくるのが泉さんだなぁと、再確認しました笑。ツルちゃん…!!頑張った…!かっちゃんに盛大な拍手を送りたい(o^^o)最後の最後まで、楽しんで読ませて頂きます。 (2019年3月29日 18時) (レス) id: 44840d8a16 (このIDを非表示/違反報告)
モコ‐シファール(プロフ) - 泉さん» 確かに笑。物語続き読みました!!頭爆発とかともちゃんとのデートとか嬉しそうな笑顔とか合宿での電話とか色々素晴らしすぎて…尊い…大好き!かっちゃん攫われて泣きじゃくるツルちゃんみて私も胸がぎゅって苦しくなって泣きました…泉さんの表現の仕方大好きです! (2019年3月3日 16時) (レス) id: 562a9bf06b (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - モコ‐シファールさん» それはもはや合作と化してしまいそうなのでご勘弁を笑。どうしても話が膨らむと書けちゃうんですよねー笑。もうそろそろ物語を動かそうと思っています。そっちに注力しちゃいそうですね。自分でもどうなるか分からないのでドキドキです。。 (2019年2月20日 12時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
モコ‐シファール(プロフ) - 泉さん» うひゃー!泉さん最高!大好きー!!じゃあこんなの見たいってあったら泉さんに言いますね!← めっちゃ楽しみにしてます(*´∀`*) (2019年2月19日 23時) (レス) id: 562a9bf06b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉 | 作成日時:2019年1月11日 12時