26 ページ26
.
もう随分と通い慣れた、勝己のマンションのドアを抜け、靴を脱ぐ。
「ただいまーお邪魔しますー」
「その変な挨拶いい加減やめろや。今日飯食いに出んぞ。出る前にその書類確認しろ。」
きれいに片付けられたテーブルに、1枚紙切れが乗っていた。
「...？移籍、契約書..........？......ッ！勝己....！これ.......！？」
『勝己が事務所構えたときにさ、もし私が、ヒーローになってて、
勝己から見て良いヒーローになってたら。私を、勝己の事務所で雇って。
勝己と一緒に戦って、勝己の背中、私に守らせて.....？』
あの日の約束が、ドクリと蘇る。勝己...覚えてたんだ.......。
「リューキュウには前から話通してある。体制整えンのに時間くっちまった。....待たせたな。
A、条件に目ぇ通せ。
お前がこれで納得できンなら、俺の事務所へ来い。
対人犯罪、災害救助、情報捜査、多岐に渡る柔軟な才能、能力。プロヒーローリューキュウの文句無しのお墨付きだ。空間ヒーローサクヤ、引き抜きの移籍交渉だ。」
そう言って勝己がニィッ、と口角を上げた。
リューキュウがヒーローダイナマイトとそんな水面下の交渉を進めていたなんて...、「Aもそろそろだね」と遠くを見つめていた彼女の横顔を思い出す。
あのセリフは、彼女のサイドキック卒業を意味していたのかと、今になってその意味がすとんと降りてくる。
軽く混乱しつつも、言われるがまま書類に目を落とした。
「......なっ...！サイドキックでこんな好条件...！見たことないよ....！私、贔屓目なら受けられな」
「サイドキックじゃねぇ。俺とAでうちの事務所はツートップヒーロー体制だ。経営は俺だけどな。サイドキックは俺の選んだ精鋭がもう数名いる。」
学生時代から、ずっと心の支えのようにしてきた、勝己の背中を守りたいという目標。それは、当然サイドキックとして、という前提のもとの発想だった。
それがきれいに打ち砕かれる。
ぽかん、と口を開けていると、勝己が挑むような目でこちらを見つめ、ニィッと笑った。
「この条件で呑むのか呑まねぇのか...どっちだA！」
「.........っ、文句なしの好条件、.....この話、お受けします...！」
「ッシャァ！交渉成立だ！！！」
勝己がガッツポーズ作るなんて、珍しいな...と、高揚した様子で笑う勝己を見つめた。
きゅ、と胸元の服を握る。胸がドクドクと脈打ち、一向に収まる気配がない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 430人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泉(プロフ) - ミホさん» ありがとうございます^^物語に心を乗せて頂けたなら幸せです。 (2023年3月30日 18時) (
レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
ミホ(プロフ) - めっっっっっっっちゃキュンキュンした！！言葉に表しきらんほど感動した(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ (2023年3月30日 13時) (レス) @page50 id: 9767c8e410 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - しぃさん» ありがとうございます...！とても思い入れの強い作品なのでそう言って頂けると嬉しいです！2世のリクエスト頂いてるのでずっと考えてるのですが中々固まらず...いつかやれたらやりたいです！他作品も楽しんで頂けると嬉しいです* (2018年10月21日 11時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 一気読みしてしまいました。最高でした！！！！なんかこう、まだまだ続きが読みたいような、完結してスッキリしたような感じでモドカシイです。他の作品も楽しませていただきます (2018年10月20日 22時) (レス) id: b9e3ade31c (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - ネコさん» うわぁー...！小説自体この作品が処女作だったので、キュンキュンしたと言っていただけてすごく驚きました！誰かの心を動かせたのかと思うと本当に嬉しいです！ありがとうございます！次もぜひやりたいです。もし映画ネタバレ大丈夫でしたら続話もご覧くださいませね！ (2018年9月17日 16時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泉 | 作成日時：2018年5月21日 0時
