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わかった、と画面にただひとこと表示される。
自分の気持ちも方法も、何も定まらない今。
勝己には申し訳なかったけれど、大叔父のところへ個性強化の修行に行くとは言えなかった。
荷造りをしながらも、思考は常に勝己の言葉をリフレインしていた。
今回のヒーロー殺しのこと。
勝己が言っている意味も、わかる...。
私が逆の立場でも、きっとそんな風に思ったかもしれない。
勝己が、私を大切に思ってくれていること...必要としてくれていること。
そして、罪悪感を感じていること。
あの病室での苦しそうな表情から、それが伝わっていた...。
それでも、私を失くしたくない気持ちが勝ったから、ああ言ったんだと思う。
普通科に編入すれば、今まで通り勝己の側に居られる。
おなじ学校に通えて、最高ランクのセキュリティに守られ、
高い偏差値を誇る雄英となれば、卒業後も引く手は数多だろう。
そして、勝己と同じ景色を見ることはきっと、無くなるのだろう。
君が見ている
また、君の背中を、見つめるだけ。
荷を詰める手が止まった。
ぎゅっと拳を握る。
「よぉ、よく来たな。こんなとこで大変だったろ。」
にかっと音がしそうな笑顔で迎えられた。
大叔父の家は、電車で少し行ったところの、小高い山の中腹にあった。
この山ひとつが私有地らしく、私有地であることを示す看板を脇目に通った。
そのため家までは自力で歩かねばならず、辛いほどではないにしてもそれなりに骨はおれた。
「基礎体力がつきそうです。
今回は、お世話になります。
よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げた。
大叔父は、おう、まぁそう硬くなんなや、身内だ、とカラカラ笑った。
ひとまず荷物を置き、縁側で冷たいお茶を出してもらった。
「お前は俺に会ったことなんて数えるほどしかないだろうがな、俺は兄貴からいつもお前のことを聞かされてたんだぜ。
お前が結界術のあれができるようになった、これができるようになったと逐一なぁ。
俺はあの粗野な兄貴がここまでジジ馬鹿になるもんかと面食らったもんだった。」
くつくつと喉を鳴らし、穏やかに笑う大叔父は、祖父の面影そのままで胸が詰まった。
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まなみ(プロフ) - まだ読み途中ですが…… 違う意味でも見応え十分だァァァ!!で噴き出しました。笑 マイク先生があのタイミングで知ったら言いますね。笑 でも、そうなるとバラしたのは相澤先生ですか……?笑 (2023年2月12日 16時) (レス) @page19 id: 33510eeae8 (このIDを非表示/違反報告)
眠 - 今続編呼んでるんですけど、5話にしてはかっちゃあああん。かっこよすぎ。もうここまでかっこいいとね、そのセリフ言われたいよね。要件だけ言うと、作者神すぎ。神作を作ってくれてありがとうございます。 (2021年9月29日 20時) (レス) @page5 id: cfd8dfa5f7 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉さんめちゃくちゃ読むの早いですね...!?読んでいただいてるポイントの感想もらえるのってすっごく嬉しいです!そして私の意図しているところをめちゃくちゃ楽しんでもらえてて嬉しいwwコメントいくらでも下さい...すごい嬉しい...紅葉さんお友達になりたい... (2018年9月24日 1時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - 紅葉さん» めちゃめちゃ楽しんでもらえててコメント読む度ふっふふ...!ってなりますwめちゃくちゃ嬉しいです!なかなかオリジナルの登場人物に着目してもらえることってないと思うので、そこ褒めてもらえるの嬉しいです...!かっちゃん格好良く書けてたら作者冥利に尽きます! (2018年9月24日 1時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - まさかの黒姫出現…?!何度もコメントすみません…!でも本当にこの作品好きすぎてヤバいですわ〜!!結界師も好きだしいつか絶界も出てきそうですね!てかあの黒い霧?って絶界の前ぶれ?! (2018年9月24日 1時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉 | 作成日時:2018年3月5日 0時