108 ページ14
.
まただ。
その逞しい腕が私を抱き寄せる。そのままソファにゆっくりと倒される。私の肩の上に手をつき、ゆっくりと私を見下ろす赤い目。
覆いかぶさったニトロの香り。その空間は、あなたの独占欲で甘く閉ざされるようで。ドクドクと心臓が勝手に音を立てる。
「................。」
それなのに、あなたのその赤色が、私の目を奪う。
.........................どうしてそんな、泣きそうな顔をするの......？
揺らめく赤色はそのまま降りて、ただ私を抱きしめる。ぎゅう、と、何かを確かめるように。
お付き合いを始めてからどれくらいだろう。時々、繰り返されるその揺らめく赤色に、ぎゅうと心臓が軋む。
けれど、その儚い色を前にして、私は疑問を口にする事ができずにいた。私の肩に埋まる、くしゃりとした淡い髪越しに、きゅ、とその背中に腕を回した。
あなたは私の何に......、躊躇しているのだろう.........................。
今日も、ただ抱きしめる。
付き合い始めてもう何度かなんて数えようもない程、俺はこうしてAを抱きしめた。
ゆるくウェーブがかった髪の、その柔らかい空気に吸い込まれるように、ゆっくりとその体を押し倒す。
淡く霞みがかったような白い空気は、美しかった。そしてどんなに色が変わろうとも、変わらない、真っ直ぐ透き通ったその視線が俺に結ばれる。.........問いかけるように。
付き合い始めて、一緒に居るほどに、気付くことがあった。
Aは、綺麗だ。
制作をする時などは特に、時折、まるで別世界の住人ではないのかと、バカらしい考えが過ぎるほどに。
特別な空気を纏うAは、綺麗だった。
そんな時、伸ばしかけた手が止まる。
俺が触ったら、Aは壊れるんじゃねぇか。
そんな根拠の無い躊躇が、俺の体を支配した。それほどに、その世界は美しく、繊細であたたかかった。
俺は................、
それが壊れるのが怖かった。
俺の腕の中で、Aがその大きな瞳で見上げる。欲が無ぇわけじゃねぇ。体がザワリと粟立つ。やっとの思いで手に入った焦がれた女を前に、無欲だなんて悟りの境地に俺は立っちゃいねぇ。
それでも大事なモンを俺が壊したらと思うと、躊躇が色濃くなるのが、正直な所だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 270人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泉(プロフ) - トガさん» 死ぬほど返信遅くなってごめんなさい。。もちろん覚えてます！私の、と言って下さったのは衝撃で本当に嬉しかったです*ここまで見て下さっていて本当にありがとう。これからもと言って下さって本当にありがとう。。トガさんは私にとって特別なかたです* (2020年2月25日 8時) (
レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
トガ - 泉さん» 覚えてくださってたんですね！光栄です、、泣 大好きな作者さんから最初のファン認定を貰えたなんて嬉しすぎます。これからもずっとファンで居続けるつもりです (2020年2月13日 0時) (レス) id: 98e58341d2 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - トガさん» あ...トガさん！まだ見て下さってた...嬉しい...！一伽ちゃんの名字には、貴方のお名前をいただきました....！最初に、私のファンと言ってくれてありがとう.....！言えて良かったです...ありがとう、ありがとう。。 (2020年1月28日 0時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
トガ - 一番好きな作者さんです。ずっと応援してます！ (2020年1月27日 22時) (レス) id: 27576cbc43 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - つるぎさん» こちらこそ遅くなってごめんなさい！登場人物全員大事と言って頂けてじーんとします。。物語を受け取って下さって、私の想いまであたたかく受け止めて下さっていて、とても感慨深いです。そして引っくるめてあたたかい、と言って頂けて幸せです。いつも本当に感謝です* (2020年1月19日 20時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泉 | 作成日時：2019年11月8日 19時
