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スル、と、結弦の薬指と小指から、矢尻が抜け落ちた。
ガシャン.........!
板張りの床に矢がぶつかり、反響する音ではっと我に返った。
「.............ッ、」
慌てて離れる。結弦は完全に真っ白、といった様子で、目を見開いたまま固まっている。
「わり.................!ックソ、」
やらかした。
何でまた、こんな、嫌われるような真似を.............!
何繰り返してんだ馬鹿じゃねぇか俺。テメェの自制心どうなっとんだ。
脳内で数分前の自分をめちゃくちゃに殴り倒してやりたい気分だった。
何を、焦っとんだ俺は..............。
「..........................ちょ.......、今........なに.............。」
「......まじで、悪かった。」
「.....いやっ、まっ....!」
謝る俺に一気に現実が襲ったようで、ボッと音が鳴りそうな程にその顔が赤面する。
「..................前、お子様、呼ばわりしたのは、悪かったと思う.....。
一緒に居ると、全然後輩感なくて....お子様だなんて、もう....思ってないよ........。
.............................でも....だからって.......そんな事しなくても.......。」
腕で顔を覆って視線を泳がせながら、結弦がそう言った。
「悪かった........クソ、
殴れ、結弦。」
「..............はぁ...!?い、嫌だよ....!」
「っせぇな、はよ殴れ!俺の気が済むか!!!」
「いっ、嫌だってば...!そんな事できないよ....!」
「いいから殴れっつっとんだろうがぁぁぁ.......!」
そう凄む俺に結弦が後ずさる。
側から見りゃどっちに非があるのか分からない状況だろう。
俺が逃すまいと更に凄む、を何度か繰り返した時だった。
「じ、じゃぁ、殴る、じゃなくて。
私の言うこと、ひとつきいてくれない、かな............?」
「......はぁ!?
........変な事言いやがったら殴る一択だぞ。」
「そんな変なことじゃないと思うけど.....。
もし、都合が合えば、
来週の試合、見に来てくれないかな.......?」
「あ?ンな事でいいんかよ。」
「おかげさまで、調子戻った後の最初の試合だからさ。
............ちょっと、緊張もする、から。
君が来てくれると、なんか、安心できる気が、して。」
「..............行く。」
そう返事をすると、ぱっ、と嬉しそうに笑う顔の、その眩しさに目を細めた。
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泉(プロフ) - くじさん» ひーん....!ありがとうございます...!待ってると言って下さって嬉しいです...! (2019年5月15日 8時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
くじ(プロフ) - 泉さん» いつまででも待ってるので泉さんのペースで頑張ってください…!! (2019年5月10日 19時) (レス) id: db6b08d5ff (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - くじさん» 推しカプと言っていただけて最高に嬉しいです^^*うちの子たちが推しと呼んでもらえるなんてなんだかすごい...!活動、一時終了と言って頂けてなんだかほっとしています。。苦笑。またしっかり入れるようになったら書きたいです。 (2019年5月10日 14時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - つるぎさん» たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます...!また帰れる場所を作っていただけてとても嬉しいです涙。こんなにも作品をあたたかく愛して頂けて、こちらこそ本当に素敵な読んで下さる方に出会えて感謝です* (2019年5月10日 14時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - kazuさん» あたたかいお言葉ありがとうございます....!こちらこそ、素敵な内容で最後に物語を広げて下さってありがとうございました* (2019年5月10日 14時) (レス) id: 54e9f26b3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉 | 作成日時:2019年2月20日 16時