MAKE 96 ページ31
「はい、どうぞ」
「わー、ありがとうございます!」
小ぶりの紙袋を渡すと、琴音は元々緩んでいた顔を更に緩ませた。
狭いながらも、それなりに人が集まっている公園。
遊具で遊ぶ子供達に、それを見守る親御さん。
そして、お土産を渡す私と渡される琴音。
ロシアから日本に帰国、その翌日にさっそく私は琴音へ会いたいという旨のメールを送った。
しっかりとコートを着て、マトリョーシカの入った紙袋を持って。菊さんに“友人に会いに行く”と言ったら泣かれた。
……うん、友人なんて言葉、私の口から出たことなかったもんね。
そんなこんなで公園で待つこと五分。その間にナタちゃんから七通程迷惑メールが届いた。
彼女には無事、“気にくわない兄の友達”として認められた。ナタちゃんとも、程々の関係を築いています。
「お土産ありがとーございます!まさか、本当にくれるとは……」
「文句あるなら返してもらうけど」
「超感謝ですぅ!!」
袋をガッと抱き締める琴音。その表情は未だへらへらしたものである。
私は はぁ、とため息をついた。
まったくこの子はわかりやすすぎる。嬉しさが滲み出るどころか溢れ出ていた。
「ダメですよ、Aさん。ため息は幸せを逃がします!いくらあたしに呆れたからって!」
「あれ、今回は美人とか言わないんだ」
「えへへー……前回のは冗談ですから。いや、Aさんはキレイですけどね」
私の指摘に困ったように笑った。
「私が綺麗なら、貴方もじゃないの?」と言うと「顔はそっくりですけど……あたしバカですから」と返された。
性格が台無しにする、と言いたいらしい。
「来たばっかでこんなこと言うのは申し訳ないんですけど……ごめんなさい、あたし弟との約束があるんで、そろそろ帰りますね」
「いや、こっちこそごめん。急に呼んで」
少し声のトーンが変わったと思ったら、申し訳なさそうな笑みを向けられた。器用な表情である。
さよなら、と別れを告げて歩き出す琴音の背を見ながら、ふと思った。
彼女がこちらの私なら、彼女の弟はこちらの私の弟のようなものなのだろうか。
彼女の家族構成はどうなっているのか。
友人というには私達は、お互いに知らないことだらけだった。

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きくさぶなそれ(プロフ) - 作品自体は何年も前のものなのでコメントするのはちょっとアレかなと思ったんですけど......あなた様の書くAPHの続きが読みたいです!!最近ではアニメ7期も来てたし、ヘタリア初のキャラブック発売するしで最近再熱したんですけどやっぱり続きめちゃ気になります!!! (2021年11月11日 17時) (レス) @page33 id: 422828d005 (このIDを非表示/違反報告)
響(プロフ) - これってもう更新されないのですか? 続きが気になるのですが…… (2017年9月26日 6時) (レス) id: f561f07911 (このIDを非表示/違反報告)
影雪 - あの、突然すみません!結構前?にあった『海賊紳士と非日常』のアーロン君と主人公ちゃんの小説を書いていただけませんか?アーロン君が転生してアーサーさんと再会し主人公ちゃんに惚れ直す…?みたいな話で出来ればオチもアーロン君で…突然すみませんでした!! (2017年8月31日 0時) (レス) id: dc73484863 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - すごく面白かったです。続き楽しみにしてます。 (2016年12月10日 5時) (レス) id: 00e0536328 (このIDを非表示/違反報告)
世界領 - とっても面白いです!更新待ってます (2016年10月25日 22時) (レス) id: 3aaa89a69c (このIDを非表示/違反報告)
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