FROM NOW ON

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『本公演に出演予定の岡田Aですが、成長に伴う変声のため、本公演をやむなく降板させていただくこととなりました。』



主人公役のボーイソプラノは、有限だ。中学生になったぼくの体は、１日ずつ確実に姿を変えていった。
昨日まで難なく出ていたオクターブ上のBが出なくなる。声が遠くへ伸びない。身体中が痛みに襲われ、手足を伸ばして踊ることも難しく、自分をうまく表現出来ない。

夢を叶えたい。その一心で掴もうと走り続けてきたのに。素晴らしかった夏は、一瞬で遠ざかっていってしまった。ステージからの眩い景色を脳裏に焼き付けて。ああ、また、そこに立ちたい。それが、ぼくの初めて味わった挫折だった。



舞台を降板してから、ぼくは、母親に頼み込み可能な限りたくさんのオーディションを受けた。もう一度、スポットを浴びる、そのためにはタイトルや事務所のネームバリューは問わなかった。
しかしながら、自棄になると結果はついてこない。変声を迎えたばかりの不安定な歌声、荒削りなヒップホップに、二の次にしていたバレエ…―――自分が如何に中途半端であるか初めて理解した。オーディションに選ばれたことで長くなった鼻が、容易く手折られるような感覚がそこにあった。

だけど、転機は、訪れた。
東方神起の事務所らしい。と、韓流ブームにすっかりと巻き込まれた母が探してきてくれた韓国の芸能事務所のグローバルオーディション。アジア人なら誰でも応募でき、歌、ダンス、演劇、モデル、作詞作曲の5部門から選出される。

受かればどうなるのか、韓国に行くのか。いや、合格するはずがない。記念受験にも程があったけれど、誰かに認めて欲しくてぼくはその門戸を開いた。

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