#26 ページ27
Aside
太宰が太宰であったから
私は私の望むものを太宰に求めた
幸い彼の異能は触れたものの異能を解除するというもの
だから私は、昼夜問わず異能で自身の痛覚と恐怖を殺していた
太宰「痛みも恐怖も理解しているのかい?」
A「いや。それは本当にわからない。私の痛みは一般的なものとは違うし、恐怖は…遠い昔に棄てた。もう覚えていない」
太宰「…そうかい」
嗚呼…
いけないね
どうにも私たちはみじめにも終りを引き延ばしている
別れを惜しんでいる
別れが言えるというのも、案外悪いことなのかもしれない
それとも中也とのお別れで決意を使い果たしてしまったのだろうか
こうしてまた思考に沈もうとする自分に気づき、思わず苦笑する
それからなるべく自然に太宰の名前を呼び、手を差し出した
終わりにしよう。
そう言う意味を込めて
言葉にはしなかったが、太宰もわかっているのだろう
どこか責めるような、やるせなさを感じているような眼を向けてきた
私はそれにただ笑って答える
怨めばいいさ
お互い様だ
しばらく見つめ合ったあと、太宰は意を決したように私の方に腕を伸ばした
触れれば終わり
だから差し出した手を握るだろう
そう思ったのに…
A「だざ、い…?」
何を思ったのか、太宰はその長い腕で私を抱きしめた
まさか抱きしめられるとは思わず、思考がとまる
だって太宰は私のことを…
太宰「…最期くらいいいだろう?」
ずっとこうしたかったんだ。そういうと太宰は腕の力を更に強めた
触れたことにより私の身体が消え始める
A「ずるい人…大っ嫌い…」
少し鼻にかかった情けない声が出た
太宰はそんな私を鼻で笑い、自分も嫌いだと呟いた
身体の大半が消えた
残った腕も指先から徐々に消え始めている
どうせ消えるなら、と太宰の背中を抱きしめた
A「さよなら…親愛なる私の神様…」
私を生者にしてくれてありがとう…
扉の隙間から吹いた風が私の残滓をかき消した
残ったのは魂の抜けた身体と太宰と包帯だけ
あまりにあっけない終わりに、太宰はAの身体に触れた
「―――さよなら、愚かで愛しい迷い犬」
-END-
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