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#14 ページ15

Aside


小腹が空いていたこともあり、探偵社の下にあった喫茶店に入ることにした

仕事場の下にこんな素敵な所があるんて羨ましい限りだ


ボックス席で鏡花ちゃんと少年と向き合う

鏡花ちゃんはなにも言ってこないが、小まめに私の様子を伺っているようだ

それに対し少年はどこか居心地悪そうに身じろいている

まぁ、無理に連れてきたのだから仕方ないね


運ばれてきた珈琲を口に含み、少年を見つめる


この少年どこかで見た気が…



A「…少年、名前を聞いてもいいかな?」



急な問いに思わず少年は首を傾げた



少年「中島敦です…」


A「あぁ、君が。」



芥川くんが探していた人虎であったか

見たことがあったのは資料で目にしたのだろう

納得、納得と一人頷いていると敦くんがなにか言いたげに私を見ていた

そんな彼に笑顔を返す



A「こちらの話だ。気にしないでくれ」


敦「あの……有島さん…は…」


A「…そんなに萎縮しないでくれ給え。私が困る」




冗談めかしでそう言うと敦くんは一言謝った

謝罪を求めた気は無かったけれど…

これは彼の性なのかもね…




A「太宰のことを教えてくれまいか?」




話題は何でも良かった

ただ、強引に連れ出した敦くんの緊張を和らげる事が出来るのなら…

なにか共通な話題を。と思って口をついたのが太宰のことだった




敦「それは…僕より有島さんの方が…」


A「…そうだね。確かに敦くんより私の方が太宰と関わっていた期間は長い…でも今の太宰は私の知らない太宰だ」




数年空いたからだろうか

それとも私が彼にとって煩わしい存在であったからだろうか

探偵社にいる太宰は、昔よりも幾分か生き生きとしているように見えた

あんなに感情を顔に出さない人間であったはずだ…

そうであったのに…




鏡花「……寂しいの?」


A「…そう見えたかい?」


鏡花「見えた。置いてかれた人間の顔をしていた」


A「置いてかれた人間、か…」




参ったな…私はそんな顔をしていたのか…

自分で思っている以上に精神的にきてたらしい

笑えてしまうな…

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作者名:エバ。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年5月16日 12時

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