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「なんで今更隠そうとするんだよ。別にいいじゃん」
「だ、だって男なのにこんなピンク色の可愛いキャラクター好きなんて恥ずかしいでしょ……?」
「なんで?別に何好きでもいいだろ。大体ここに女装好きなやつがいるのに、そんな事気にするなよ」
そう言ってほら、と改めて差し出すと、今度こそジナはぬいぐるみを受けとった。
手のひらサイズの小さいピンク色ぬいぐるみは、確かに傍から見たらジナには合わないかもしれない。
でも、ぬいぐるみを見ながら嬉しそうに笑う顔は可愛くて、この顔を見たら誰も文句なんて言わないだろう。
…………ん?可愛い?
「ありがとう、ユリ。大切にするね」
「………………」
「ユリ?」
「え?あ、ああ、うん。棚に飾ってやって」
今、俺ジナのこと可愛いって思った?
今まで男に対して可愛いなんて思ったことないのに。
この世で可愛い男なんて、俺しか存在しないとまで思ってるのに、なんでだ?
「あのさ、良かったらもう一個はユリが持っててくれない?」
「え?いいの?」
「うん。ユリのお金で取ったんだし、2個とももらうのは悪いから」
いいのかと思ったが、同じぬいぐるみを2個はさすがにいらないのかもしれないという結論に至り、ジナの言うとおり受け取った。
ジナに聞いたところによると、このキャラはマスコットキャラクターなどでは無いらしく、ゲーム内に出てくるすごい強いボスキャラクターらしい。
この見た目でボス……。確かに角とか目とか、よく見れば怖そうに見えなくもないかもしれない。
「な、なんだよ」
「いや、ユリってやっぱり可愛いなって思って。僕が持ってるより、ユリが持ってる方がより可愛く見える」
「なっ……。と、当然だろ。俺は世界一可愛いんだから」
ぬいぐるみをじーっと観察していると、視線を感じたから理由を聞いてみたらそんなことを言われた。
急に胸がキュッと苦しくなって、変に心臓がうるさくなる。
可愛いなんて今まで死ぬほど言われたことがあるし、俺にとっては言われることが当たり前までなっているのに、なんでこんな風になるのか。
……でも、そういえばジナからはあまり可愛いと言われた事がないかもしれない。
「帰ろうか」
「う、うん」
ゲームセンターから俺の家ま送ってもらうまで、またジナは色々話してくれたけどあまり頭に入ってこなかった。
なんだったらストーカーのことも忘れて、家に着いてからもずっとジナのことを考えてしまった。
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作者名：萩焼 | 作成日時：2022年10月2日 21時
