7-1 JNside ページ33
「ん………」
ゆっくりと目を開けると、頭が痛いし、なんだか全身が熱かった。
あれ、なんだっけ……。ああ、そうだ。
僕、風邪で熱を出しちゃって、家で休んでたんだ。
確かもう3日くらい休んでしまっている。
今回ばかりは自業自得だよなあ、と心の中で苦笑いを零す。
大雨が降った日、僕は傘を忘れたユリのために購買で代わりに傘を買おうとしていた。
ユリには売り切れてたって言ったけど、本当は違う。
僕が行った時には最後の1本だけ残っていて、それを買おうとしたけど欲が出たんだ。
ここで傘を買わなかったら、ユリと一緒に帰る口実が作れるし、相合傘もできるかもしれないって。
そんな事を考えていたら、あとから来た人に傘を買われてしまって、本当にユリと一緒に帰れることになった。
帰る方向だって真逆だったけど、どうしてもユリと一緒に帰りたくて嘘をついたら、案の定風邪をひいてしまった。
自分でも馬鹿だなあって思ったけど、それよりもユリと一緒に帰れたことが嬉しかったし、すごい価値のある時間だった。
でも、休んでることでユリの隣に誰か別の人が座ってないかとか、知らない人に言い寄られてるんじゃないかとか、心配でたまらない。
馬鹿だと思うかもしれないけど、それくらい僕はユリのことが好きだった。
こんな感情、ユリに知られたらきっと距離を置かれてしまうだろう。
絶対にバレてはいけないけど、思うことくらい許されるはずだ。
「あ、起きた?」
「……………え?」
ぐるぐるとそんなことを考えて、とりあえず起きてパジャマを着替えようと体を起き上がらせると、急に自分以外の声が聞こえてきて驚いた。
声の方に視線を向ければ、僕の勉強机の椅子に座っている茶髪のかわいい女の子がいた。
え、誰、と思ったが「汗すごいな。タオル持ってくるよ」という、見た目に反した男の声を聞いてようやくユリだと頭が理解した。
「なっ、なな、なんでユリがここに!?」
「おい、急に立ち上がるなよ。危ないだろ」
「だってユリが、え!?夢!?痛っ!!夢じゃない!!」
「寝起きから元気だなお前」
勢いよく自分の頬を叩くと、ものすごく痛かった。
ユリに会いたくて僕の頭が勝手に幻でも作ったのかと思ったが、そうじゃなかった。
ユリは呆れたような反応をしながらも、心配そうに僕を見ていて、とりあえず座っててと言って、部屋から出ていった。
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作者名：萩焼 | 作成日時：2022年10月2日 21時
