1-3 ページ3
「母さん、メイク道具貸して!!」
「え?急に何?」
「いいから!!」
「ええ……いいけど……」
そして俺は「あの女より可愛くなる」という方法で見返してやろうと行動を始めた。
なぜもっとかっこよくなってふったのを後悔させてやる、という方向に行かなかったのか。
たぶん、当時の俺もこれ以上身長が伸びないのを察してたんだろう。
どう足掻いても身長が伸びないのなら、カッコイイのは諦めて可愛い方向にシフトを切るという、我ながら思い切った決断をしたんだと思う。
それから俺は受験勉強なんてほとんどそっちのけで、美容の勉強を始めた。
幸い地頭が良かったから、高校の受験はどうにかなった。
地元でも頭のいい私立の中高一貫の男子校に奨学金制度を使って入ったが、まあ驚く程に過ごしやすかった。
男子校だから女子がいないのも良かったし、身長でいじめられることもなかった。
ただ、友達は1人もできなかった。
まあ、部活も入らなかったし、男なのにやたら日焼け気にしたりとか、そりゃ声掛けてこないよなと自分でも思ったから、その点は別に良かった。
ぼっち生活のおかげでアルバイトをするようになり、さらに美容に金を使えるようになって、自分でメイク道具を買えるようになった。
全く自分とは違う、理想の顔に変身できる魔法のような行為に俺は夢中になった。
もっと完璧な女の子を目指して、洋服も気を使うようになり、声さえもボイトレに行って女の声を出せるように訓練した。
そうして、現在の俺がいる、というわけだ。
高校では制服で過ごしていたが、休みの日に出かける時はいつも女装していたし、大学に入ってからはずっと女装してるので、男の姿で過ごすのがむしろ恥ずかしく思うくらいには女装生活が長かった。
272人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:萩焼 | 作成日時:2022年10月2日 21時