17 ページ19
サンダルを履き、2人を起こさないように静かに扉を開ける。
ふわっと、私の肌を撫でるように吹いている風。
「こんばんは、かぶき町」
私は、夜のかぶき町に挨拶をする。
まだ夜だと言うのに、昼のように明るい。
さすが、都会。
お昼よりも、空気が気持ちいい気がする。
……そんな時、またあの悩みが頭の中を埋める。
「ねぇ、かぶき町さん、私は…私は、ここにいても、いいのかな」
なんて、かぶき町に話しかけても何も返ってこないことは分かっている。
だけど、だけれども、誰かにこの悩みを聞いて欲しい、けど言ったら止められそうで、私が前に進めないような気がして、なんか嫌だ。
「あーあ!なんで私って産まれたときから不幸なんだろうな!」
さっきよりも少し大きめの声で叫ぶように言う。
貧乏で、親も早くに亡くなって、好きな人には嫌われている。
不幸の他、言う言葉がない。
「お母さん、私このまま生きてていいのかな。なんか、もう…私なんていなくてもいいんじゃないかって思うよ…」
今度はお母さんに問いかける。
これももちろん、返事は返ってこな…
「生きてていいんじゃねェか」
…え
後ろを振り向くと、さっきまでいびきをかきながら寝ていた銀さんの姿が。
「え、起きて、たんですか?」
そう言うと、まァなという声が返ってくる。
え、いつから?いつからいた?全然気づかなかった。
「あの、いつから…」
「お母さんがどうのこうのの頃から」
…最初からって訳じゃなかったんだ。
「どうしたん、ですか? 眠れないんですか?」
「おめェが出てったのに気づいてな、んで、頭覚ましてからきた」
じゃあ、出てった時から、気づいてたってこと?
…なんか、恥ずかしいな。
瞬間、ビュッと吹く風。
その風に耐えられず、くしゃみを出してしまう。
好きな人、の前なのに、恥ずかしい。
そこにふわっとくる、暖かい温もり。
「…へ?」
「さみィだろ、少しだけでいい、こうしてろ」
抱きしめ、られてらっしゃられ、る…?!
色々な恥ずかしさでもう頭がパンクそうだ。
押し退ける気にもなれず、じっとそのままの状態でいる。
目の前に銀さんの胸元が見え、思わず下を向く。
顔がどんどん熱くなる。
なんで、いつもみたいに冷たくないんですか…?
.
271人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい(プロフ) - 夢主を探している、ぎんさんのside見てみたいです!更新楽しみにしてます (2019年7月24日 23時) (レス) id: 6a8167697e (このIDを非表示/違反報告)
美闇 - 面白いです!頑張ってください!! (2019年7月23日 11時) (レス) id: 9b2e6e7bfa (このIDを非表示/違反報告)
月歌(プロフ) - これからの展開が楽しみです……!!! (2019年7月20日 23時) (レス) id: 8fe6acde2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:恋歌 | 作成日時:2019年7月19日 18時