賞味期限とか、消費期限とか【商店街の人々】 ページ30
「有難うございましたー!」
と、長い髪を一本の三つ編みにしている女子生徒・ユノさんが、僕の前で頭を下げた。
「また明日も宜しくお願いします。気を付けて帰って下さいね」
頭を下げるユノさんに、少しだけ身振り手振りを交えながらそう伝える。
身振り手振りを交えてしまうのは、いつも小さな子ども向けの絵本の読み聞かせを行っているからだろう。
小さな子ども相手には、手ぶりを交えるのが一番だからだ。
僕がそう言い終わってから、ユノさんはがばっと頭をあげ、「はい!」と、満面の笑みで去って行った。
山の向こうに沈みゆく橙色の柔らかな陽光が、生徒たちの横顔を照らす。
「今回もありがとうございました」
「いえいえ。おかげさまで大助かりでした」
僕は言葉と身振りで引率にやってきていた雲隠先生に、感謝の意を示す。
きちんと気持ちは伝わったようで、雲隠先生が微笑を浮かべた。
その笑顔には、寂しさが混じっていて見ているこちらの胸がきゅっと痛むようだった。
だから、僕は言った。
「無理して、笑わなくて結構ですよ」
すると、雲隠先生は一瞬戸惑いの表情を見せたものの、再度さびしそうな笑みを浮かべた。
「あっ、いえ。僕はいいんです」
「そうですか。それでは、明日も宜しくお願いしますね」
「ええ、では」
雲隠先生はそう言って片手をあげ、生徒と共に去って行った。
☆★☆★
『はしごたか』の店主・ネイビーが恐羅神社の石造りの階段の三段目に腰を掛けていると、神社の主である本田の姿があった。
先にネイビーに気付き、口を開いたのは本田であった。
「あら、ネイビーさん。どうです、『はしごたか』の調子は?」
「おお、本田さんか。お久しぶり」
「そういっても三日前にあったじゃないですか」
にこやかだが少し嘲る感情が混ざった笑顔で本田が嗤いながら言った。
ははあ、この人はやっぱり無礼な所があるな、とネイビーはあくまでも心の中で呟く。
「あら、今毒づきました?」
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雨読@低浮上…?なのか?(プロフ) - まだ四十八話だったのですが、続編の考査編へ移行させていただきます!これからも宜しくお願い致します! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新しました。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新します。 (2020年7月10日 8時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - 更新しました。 (2020年6月30日 18時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - お久しぶりです。更新いたします。 (2020年6月30日 17時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スカイハイ転生学園一同 x他9人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakyomatsu1/
作成日時:2020年5月12日 16時