壱 中 ページ3
「戦争が終わりました。時間遡行技術は情報規制され、しばらく表に出ることはないでしょう。
そして…戦争に使った兵器も、片さねばなりません」
『戦争に使った兵器』頭の中に重く沈んで来る。
これが何を示すかなんて一目瞭然だ。この戦争で使われた、兵器などと呼称されようものは一種類しか…
「…どういうことですか」
声が硬くなり、前を睨みつけてしまう。
この人はあくまでもわかりやすく、そして審神者ではない人がどう思うのかを語っているだけなのに
「刀剣男士様方には本霊にお還り頂く事になります。
人の都合で振り回してそれで終わりか、とも思うかもしれませんが、政府はさらにとんでもないことをしようとしています。」
みんなが居なくなる…現実が押し寄せて来る。
そうか、戦争が終わるとはそういうことか。当然のことだったはずなのに思考が追いつかない。
まて、とんでもないこととは？
「『刀剣男士人間転生計画』です。歴史を守るといっても、細かいところが変わっていってしまうのはご存知ですね？」
知っている。
人間には重要度が振られており、SからEで歴史に必要かどうかが政府に記録されているのだ。
例えば織田信長などは文句なしのS指定。この人がいなくなるとマジでヤバイみたいな人。
逆にEだと、居なくなっても何も変わらない。
無情だが、世界の修正力のおかげで居なくても問題なく正しい歴史が訪れる人のこと。
「過去のE指定で生まれるはずが生まれなくなってしまった子供の元に。
…悪くいえば、優秀な霊力を持つ子孫を23世紀に残せる可能性が高い刀剣様を成り代わらせようという計画です」
歴史に存在するはずだったものに送り込むのですから、生まれた後に何をしようともそれが正史です。その時を生きる者に歴史は変えられませんから。
苦々しい顔で言い切った担当さんを、おれは目を見開いて見つめることしかできなかった。
そんな、刀剣男士のことも、親になる人のことも考えてないような、先を守るための利益だけを求めた計画。
「その話をしたってことは…」
「はい。最初期運営本丸であるこの本丸にまもなく通達が来るでしょう。
…おぞましくも、褒賞という扱いで」
「ど、どうにかして回避することは！？」
そんな人道に反した行いは看過できない。
担当さんは首を横に振った
「私の力不足で気づくのが遅れました…申し訳ないっ…！」
深く深く頭を下げ、震える言葉で謝罪の言葉を紡ぐ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：トイプードル | 作成日時：2018年10月30日 8時
