episode28栞奈side ページ30
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早川くんと会ったカフェを出て、私と南ちゃんは駅前のビルにあるアニメ〇トに行った。
いくつもの"推し沼"にハマっている私達は、あのアニメの誰が可愛い、このアニメはみんな大好き、と好きなアニメのコーナーを手当り次第に捜索。
この店にはよく来るし、定員さんに顔を覚えられるほどの常連なのに、まるで初めて来たかのようなはしゃぎっぷり。
そうしていると時が過ぎるのはあっという間で、気づいた時には5時半を過ぎていた。
「うわ、もう5時半……南ちゃん、塾大丈夫?」
「えぇ、まじで? うわっ、ほんとだ、そろそろ帰らなきゃ」
この後塾がある南ちゃんはもう帰らなければいけない。
1人で買い物をするほど寂しくもないので、私も帰ることにする。
「ねぇ栞奈、あっちの路地行けば近いから行こうよ」
「えっ、そうなの? わかった」
近道だという裏路地を進むと、何やら男の人の笑い声がした。
「ね、ねぇ、南ちゃん、やっぱり戻って大通り歩いて行こうよ……」
「いいのいいの!」
私の制止を聞かない南ちゃん。
狭い路地で、向こうから2人組の男の人が歩いてくるのに気づく私。
笑い声の主のようだ。
面倒ごとにならないことを祈りつつ、その2人とすれ違った。
……と、思ったら。
「へぇー、君ら可愛いじゃん、一緒に行かない?」
「好きなモン奢ってやるよー?」
茶髪の人と黒髪に青いメッシュを入れた、いかにもそういう感じの人。
面倒ごとになってしまった。
どうしようか、と南ちゃんをチラッと見ると、平気そうな顔で笑っている。
ちょっと、嘘でしょ?
なんで笑っていられるんだ。
「いやぁすみません、私達これから塾なので」
「塾なんかいいじゃん、何? 高校生?」
「しつこいなぁ」
直後、うざいと呟いた南ちゃんに腹が立ったのか、茶髪の方が南ちゃんの腕を引っ張った。
「やめてください!」
自分でもびっくりしたが、叫んだのは南ちゃんではなく私の方だった。
黒髪の方が、ちらりと私を一瞥し、舌打ちした。
茶髪の方は、私が叫んだのを聴き、南ちゃんから手を離してこちらへ来る。
怖くて目を瞑ると、なんだか走っているような足音がする。
「やめろよ!」
反射的に目を開けると、私の目には大好きな人の背中が映った。
私と対して背丈の変わらない、秋の姿が。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時