恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ9)

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第8話物語の出発点ページ9

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こんがり焼けたパン、綺麗に象られたオムレツの傍には
高級そうなウインナーや分厚いベーコンが並び
スープからはコンソメの良い香りが立ち上げている。

仕上げに胡瓜やトマトなどバランスの取れた野菜が色とりどりに並んでおり、
ヨーグルトには丁寧にカットされたフルーツがのせられていて
それはどれもAの大好きなフルーツばかりだった。

「ほら、冷めないうちに早く食べろ」

兄はもうすでに朝食を食べ終えたようで、手元に珈琲カップだけが置いてある。
Aは兄の向かいにある椅子に腰掛けた。

『いただきます』

そう言ってスプーンでオムレツをすくう。
Aは小さく口を開けてスプーンにのったオムレツをぱくっと食べた。
甘くてまろやかな卵の味がじんわりと口内に広がる。

『……ん～！美味しい』

「そうか。……なら、もっと食え」

Aは花が咲いたような愛らしい顔で笑う。
それを見たスタンダールは安心したように笑った。

『ありがとう、お兄ちゃん』

「気にするな。…お前は明日から寮に入る。
　俺の手料理を食わせてやれるのはいつになるかわからないからな」

スタンダールは言ってから、少し寂しそうに長い睫毛を伏せた。
青色の瞳が金色によって塗り替えられていく。

「……お前が俺の前で笑ってくれるなら、俺はどんな無理難題だろうと喜んでするさ」

時計の針が動く音だけが、2人のいる静かな部屋に響く。
窓から入り込む隙間風が、テーブルの上に飾ってある紅い椿の花を小さく揺らしていた。

―――――――――――・・・・

Aがエントランスを出れば、目の前にシルバーの車が停まっていた。
ぴかぴかに輝いている其れは、一目で新車だとわかる。

スタン兄(にぃ)車新しくしたんだ、なんてAが
ぼけっと見つめていれば、運転席の扉が開いた。

「何ボケッと突っ立ってる？早く乗れ」

そう云いながらスタンダールは、助手席のドアを開けてくれた。
いつもはラフな私服だが、きっちりとスーツを着こなしている姿はなかなか新鮮である。
Aがじーっと見つめていれば、スタンダールが口を開いた。

「…今日からお前も高校生か」

『そうだよ。実年齢で言えば有り得ないけど』

Aが車に乗り込めば、新しい車の匂いが鼻を掠めた。
なんだか、懐かしい匂いだ。
兄のような、すっきりとした爽やかな香り。