第27話 昼の着信音 ページ28
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プルル、プルル―――・・・
調理実習室内に、Aの携帯の着信音が響く。
机の上に置かれていた携帯が、ぶるぶると震えている。
椅子に座っていたAが、慣れた手つきで携帯を開いてから
表示されている名前を見てブチッと電話を切った。
そして、携帯を閉じてそっと机に置いた。
その一部始終を向かいの席で見ていた燐としえみは顔を歪めた。
「あの……Aちゃん、それ急ぎの電話なんじゃ……」
『嗚呼、大丈夫。くだらない電話だから』
「「「ええ……」」」
雪男、燐、しえみの3人の声が重なる。
しえみの問いにAはごく当たり前に答える。
未だにA以外の生徒は入ってこないので4人で話していた。
Aがこの短時間で仲良くなれたのは多分、燐の高いコミュ力のおかげだ。
人見知りするしえみともAは自然と話すことができていた。
そして再び、プルル、と着信音が鳴る。
Aは再び、携帯を開いて慣れた手つきで電話を切った。
着信音が鳴る。
Aが切る。
着信音が鳴る。
Aが切る。
着信音が鳴る。
Aが切る。
数回繰り返してから、やがて携帯は音を鳴らすのを止めた。
「あの……何回も掛かってきてるし、本当に急用なのでは……？」
『ないない。大丈夫だよ』
一体何が“大丈夫”なのだろうか。
雪男は冷や汗をかきながら、Aを見る。
やがて再び、Aの携帯の着信音が鳴った。
しかし、一向に出ようとしないAに雪男は声を掛ける。
「ナアマさん、鳴ってるよ」
『そうだね〜』
「そうだねって……」
『この携帯はね。兄以外ろくでもない電話しか掛かってこないの』
Aは鳴っている携帯を無視して、飄々と燐の淹れた紅茶を飲んでいる。
机の上でブーブーと虚しく鳴っている携帯を、燐がそっとのぞき込めば
其処に表示されている名前に、ぎょっとした。
―――�狷参住姚�
確かに、そう表示されている。
「………(みち、ばけ？これ、なんて読むんだ)」
燐は隣の雪男に、こそっと耳打ちして訊ねる。
「………(うん……えーと……�爐匹Δ韻鍬瓠帖弔世�)」
「どうけし!?」
つい大きな声を出してしまった燐が、慌てて口を噤んだ。
Aは特に気にする素振りも見せずに、のほほんと紅茶を飲んでいる。
「………(しえみ、どうけしって何だ!?)」
「………(道に関係ある人かな？)」
「………(それは漢字の読み方を変えただけだね。道化師はピエロのことだよ)」
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作者名：森ミク | 作成日時：2020年2月11日 19時
