恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ18)

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第17話理事長と少女ページ18

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「では、これから定期的に私と昼食をとりましょう☆」

『わかりました……』

何故こんなことになったのだろう、とAは思った。

―――――遡ること数十分前。

白く長い廊下を、Aは歩いていた。
両手いっぱいに資料を抱え、理事長室へと向かう足取りは心なしかいつもより早い。
すると、ポケットの中でスマホが無機質な音を立てて鳴った。

Aは兄からであるという事はわかっていたが今は両手が資料で塞がっている。
Aは眉をしかめる。

……いっそのこと、床に資料を置いてしまおうか。

「その資料お持ちしましょうか？」

Aが声の主を確認するために振り返る。

「…こんにちは、A・ナアマさん」

白いシルクハットを被り、ピエロのようなふざけた服装の男が1人。
人に興味を持たないAでも知っている人物。
この正十字学園の理事長―――ヨハン・ファウスト五世。

Aは頭を上げることも、返事をすることもせずにただ黙って腕の中の資料と睨めっこしていた。

……理事長に持ってもらうのは流石にダメだろ。

『ありがとうございます。でも大丈――』

「いえいえ。謙虚なのは大変好ましいですが、貴女には似合わない」

理事長と目線を合わせないよう見向きもせずに言おうとしたが、遮られた。
そして何か最後の方にとても失礼なことも言われた。
私はまだこの人と話したことはない筈なのになぜだろう、とてもムカつく。

「それに、これは理事長室まで運ぶのでしょう？」

メフィストは資料をAから奪うと、彼女をちらりと横目で見た。
ぱちり、と2人の視線が交差する。

『流石に全て理事長先生に持っていただくわけには……！』

そう言ってAがメフィストの腕の中にある資料へ手を伸ばそうとすれば
メフィストは素早く避け、残りの資料もAの手からおもむろに取り上げた。
胡散臭い笑顔を張り付けながらAを見るメフィスト。

「ではこうしましょう。Aさん、これからお昼でしょう。ご一緒しません？」

Aは思った。
理事長相手に断ることは出来ないが誘われる覚えもない。
資料を理事長の手から取り戻せない自分に選択肢などない、と。

特に理由はないが嫌だった。

『申し訳ありませんが、私は昼食を食堂で食べているので……』

「それならご安心を。理事長室に運ばせますので」

何が食べたいですか？と私に問う理事長。
どうやら私は逃げ方を失敗してしまったようだ。