第12話 鮮やかな緑 ページ13
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Aは歩いていた。
言葉もなく、供もなく、狭い路地を歩いていた。
空は青く、ビルはさらに青い。
先程読んでいた本は、読み終わってしまったので図書室へと返却した。
薄雲と一枚の葉が、同じ速度で西に流されていく。
Aは一人角を曲がり、待ち合わせの場所へとつながっている、隣の道へと入った。
普段の私服とは違い、制服を着ているせいか何時も以上に周りの視線が彼女に集中する。
『……何してるんだろう、あの子』
丁度学校も終わったので正十字学園町――南十字通りを眺めながら散歩していた。
ふと、一人の少年が目に入った。
何か探し物でもしているのだろうか、キョロキョロとせわしなく辺りを見ている。
周りの視線には目もくれずに、その少年のもとへと向かう。
『ねえ、
「？キミは誰ですか」
黄緑と緑の綺麗な髪の少年。
周りの人とは異なるパンク系の服を着ている。
色合い的にも目立ってはいるが、なぜだかその少年にはぴったりと似合っていた。
凛とした美しい草花のような印象の少年。
タレ目が可愛いな、とAは思った。
『私？私はA。A・ナアマ。
何か困ってるのかな、って思って声かけたんだ。お節介だったらごめんね』
別にAはお人よしな性格をしているわけではない。
たまたま暇で時間もあったから、というだけの気まぐれだ。
何か用事があったとすればお年寄りや幼い子でもない限り絶対に話しかけない。
「ボクはアマイモンです。兄上に会う前のちょっとした様子見に来ただけなので困ってません」
『そう、それなら良かった。…所でその様子見、私も付き合って良い？』
Aは鈴の転がるような透き通った声でアマイモンに問う。
Aはアマイモンに興味があったわけではない。
ただ、周りの視線がアマイモンではなく自分に向き始めていることに気づいていた。
そして、アマイモンの後ろにいる男集団がナンパを狙い、
Aとアマイモンが離れる時を伺っていることも。
Aは口説かれるのも言い寄られるのもあまり好きではない。
特にこのような街中での誘いなんて最悪だ。
だからアマイモンを利用することにした。
「なぜです？」
『暇だから』
アマイモンは全く理解できなかったが、案内役には丁度いいと思い“良いですよ”と頷いた。
Aは悪戯っ子のように小さく笑みを浮かべると、アマイモンの左手を握る。
『じゃ、あそこから行ってみよう』
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作者名：森ミク | 作成日時：2020年2月11日 19時
