Life of BTS はじまりの鐘 (ページ42)

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「……腹筋」

すると、ふいにそんなAの呟きが聞こえ、ジミンがまたぎょっとした顔をする。

JM「腹筋はもう諦めて……」

「いや、そうじゃなくて。
振付、腹筋を見せるのはどうかな？」

その突拍子もない提案に、ホソクはぽかんとする。

「ジミナの腹筋、割れてるんだよね。
だったら、服をめくって腹筋を見せればいい。
それならわざわざ曲に似合わない難易度の振り付けは必要なくなるし、シンプルに男らしくできる」

そんなAの説明で、ようやくホソクは合点がいった。

六分が腹筋に拘る理由。
毎朝ジムに通う理由。

急に仏頂面ばかりするようになり、挙句の果てにはレンと呼べ、などと言い出した理由。

もしかすると、A……

JH(男のフリをしろ、って言われた？)

代表にAだけ呼び止められた後、まさかそういわれたのではないだろうか。

発表されたデビュー曲は、本当にただただやんちゃな少年たちがイメージの曲だった。
今まで自分のことで精一杯で考えもしなかったが、このコンセプトは普段のAにはあまり似つかわしくない。

JH(でも……そんなの。なんか、違う気がする)

Aを知らない者たちならば、この綺麗な顔で凄まれればおそらく男らしく思い、男だと思い込んで惹かれるのかもしれない。

それに、Aだって、本当に男らしくなれるものなら成りたいと思っているのかもしれない。
口調を男っぽくしてみたり、筋肉をつけてみたり、強面の真似をしてみたり。

けれど敢えてAが今までそうしてこなかったのは、それが“自分らしさ”とはかけ離れていると、自分で分かっていたからじゃないだろうか。

JH(でも確かに、今後ファンにAの性別が知られれば、Aを”女”として見る人だって沢山出てくる。それが防弾少年団の“欠点”になるか、“魅力”になるか……。冷静に考えれば、答えは明白だ)

Aは恐らく、防弾少年団のために、そして自分の人生の為にも、真実を隠す道を選んだのだろう。
だとすれば、その決意に水を差す権利はない。
むしろ、ホソクを含め他のメンバー達にとっても、そちらの方が好都合だ

JH(Aがその覚悟をしたのなら、俺もいい加減、あいつが“男”だって腹くくらないとな)

思いながら、目の前に立つA……いや、レンを、ホソクは真っすぐ見つめる。
そして、どこか心の奥に湧きあがる妙な感覚に、自分でも訳が分からず首を傾げるのであった。