Life of BTS はじまりの鐘 (ページ15)

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「えっと……では『ジャミロクワイ』の、(Don't) Give Hate a Chanceを」

「ははは、中々渋い選曲だね。いいだろう。楽しんでやってくれ」

シヒョクが上げた笑い声に、少しだけ頬を緩めた少女。
やはり緊張していたのだろう、いくら微笑みを湛えていても、こんな場では流石に表情が強張るらしい。
その変化は分かりづらいものだったが、審査員たちは少女のまだ子供らしい一面を垣間見たような気がした。

秘書が音源を流すと、シンセサイザーとベースの特徴的なイントロが鳴った。
実を言うとパン・シヒョクは、ひそかにジャミロクワイのファンだった。

少女は徐々に振りを始め、ベースとドラムのグルーブに体を乗せていく。

これも即興なのだろうか。
先ほどとはまるで毛並みの違う軽快なステップは、どこかマイケル・ジャクソンを彷彿とさせる。
タップダンスの要素を取り入れるつもりらしい。

『Why can't we be together? Could you love me, don't hate me ……』

少女の掠れた低音にピッタリな、ジャジーかつテンポの速い曲。
うねるような特徴的なベースに、少女の身体が揺さぶられていく。

『We've been giving hate a chance……
And the love will be running out for us
Can you feel the dreams of life
We're hopping we can still survive
As the wind carries every dove away』

ワンコーラスを終えると、審査員から自然と感嘆が沸き起こった。

先ほど審査員の一人が述べた通り、歌唱技術には課題点が多くみられる。
だがそれを含めても、少女が見せた短いパフォーマンスは彼等を魅了した。

多ジャンルの要素を散りばめたダンスが、この曲の歌詞に含まれる平和への願いを惜しみなく表現している。
決して哀しい曲ではないし、曲調も明るい。
しかし彼女のダンスと声質が、そこに含まれた深いメッセージをこれでもかと表現したのだ。

***

「どうでしたか……シヒョク代表」

少女が去ったスタジオ内で、審査員たちによる話し合いが行われていた。

「あぁ……」

審査員たちが息を呑み代表の言葉を待つ。
彼等は既に、彼女の魅力が会社に多大な貢献をもたらすことを確信していた。

「……君の言う通りだったよ。彼女……いや、彼こそ、私が求めていた人材だ」

女という点を抜きにすれば。
そう出かけた言葉を飲み込み、やれやれと肩を竦める。

「菅野A。彼を、防弾少年団の有力候補として迎えよう」