6. オーディション ページ11
--
「……なんだって！？」
パン・シヒョクは、即席で書かれたらしい穴だらけのプロフィールを手に、目を白黒させていた。
応募者は、日本の大阪在住の高校２年生。
ダンスの経験があり、賞を総なめしてきた実力保持者だ。
確かに、これまでの応募者は経歴も浅はかで実力もないものばかりだったため、それだけでも十分に驚きだ。
だが、シヒョクが驚嘆したのはそこではない。
普通なら飛ばして読みもしない、プロフィールの基礎事項に驚いたのだ。
なぜならそこには、『性別：女』と書かれている。
これはボーイズグループを作るオーディションだ。
何かの間違いか、それとも冷やかしに来たのか。
どちらにせよ、応募者を見ているはずの秘書が追い返さなかったことが疑問で、腹立たしい。
女である以上、やるだけ無意味。
たとえミンソクの紹介だとしてもだ。
第一、なぜミンソクはボーイズグループのオーディションに女を寄越したのか。
シヒョクは書類を握る手を震わせた。
「おい！ ふざけてるのか、これは！」
シヒョクの怒鳴り声がスタジオ内に木霊する。
審査員として集められた他の役員たちも、戸惑いの色を隠せないでいた。
「シヒョク代表。落ち着いて聞いてください。
確かに応募者は、少女で間違いありません。ですが、私は彼女を見てチャンスだと思ったのです。
お願いします代表。無駄かもしれませんが、一度だけで良いので彼女を見てやってください！」
いつもは従順な秘書が珍しく意見する姿に、シヒョクは思わず押し黙る。
とは言え、相手は少女だ。
いくら実力があったとしても、ボーイズグループに入れる事はできない。
「お前、気でも狂ったのか！？ 今は当社の未来が掛かっている時だぞ！」
「分かっています！ だからこそです！ ……代表！ お願いします！ 私は、貴方の夢を叶えたいのです！」
床に伏せ土下座をする秘書の思わぬ姿に、シヒョクは叱責を飲み込んだ。
「もしも無駄足になったら、お前はクビだぞ……」
「それは……、覚悟の、上です」
真剣な表情の秘書に、嘘はないとすぐに分かった。
シヒョクは長い溜息を吐き、紙コップのお茶を口に流し込んだ。
「ありがとうございます。シヒョク代表」
「いいから、さっさと始めろ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
