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な「じゃあ敢えて聞くけど、なんでAちゃんはその声を”mono”じゃなくて”chrome”として歌いだしたの?」
――別に”mono”が歌っても良かったんじゃない?
そう言ってなーくんが真っ直ぐにAを見据える。
その声は淡々としていて、受け取り様によっては少し怖い印象を受ける。
案の定、Aが小さく肩を揺らした。
『――だって…今は両声類なんて言われてるけど、女があんな男の人みたいに歌うなんてあの当時は気持ち悪いなんて言われてたし』
な「うん、あの時期はバッシングされがちだったよね。…でも今は違うんじゃない?」
『…今更言ったって、きっと信じてくれないと思う』
な「まー確かに、ここまで声が仕上がってるとなかなか信じて貰えないかもね。…でもさあ」
――それって、事実から逃げてない?
さ「っななもりさ、」
見る見るうちにAが縮こまってきてしまっている。
責め立てるような言い方に黙ってられなくて声を荒らげてしまったが、ななもりさんに目で制止される。
その目の力強さについ言葉に詰まってしまった。
――きっと、彼には考えがあるんだろう。
ぐ、と堪えて今は静観に徹する。
ななもりさんがAと再び対峙する。
な「…Aちゃんさ、ジェルくんも女の人の声が出せるけど気持ち悪いって思う?」
『っまさか、あれは彼の努力の賜物だし個性だと思う』
な「莉犬くんが前に自分自身の事で大事なお話してくれたけど、Aちゃんは信じてない?」
『そんな訳ない!あんなに勇気を出して言ってくれた事を嘘だなんて思わないよ…!』
必死に答えるAの言葉をうん、うん、と優しく頷いて聞いている。
な「ならさ、Aちゃんのその声も立派な”個性”だし、勇気を出して言えばみんな信じてくれるんじゃないかな」
――――きっと大丈夫、もう一歩踏み出してみよう。俺たちがついてるから。
無意識に膝の上で強く握ってしまっているAの拳にそっと自分の手を添えて微笑むななもりさんに、Aは泣きそうな顔で、しかししっかりと頷いた。
瞳には涙のそれとは別の光が差していた。
ああ、やっぱりこの人は凄い。
言葉に力がある。
俺たちのリーダーは、俺たちの”ヒーロー”だ。
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月 - 待って読み途中でクロの正体当てた私凄くn((殴スミマセンデシタ。凄く面白いです! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 9562a43608 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月さん» またまたコメントありがとうございます!わたしが推されるのなんぞ勿体ないの極みですので是非今後とも推しくんを推していってくださいませ...!!! (2020年8月3日 0時) (レス) id: 3018b56d1a (このIDを非表示/違反報告)
へかーてぃあ@夢見月(プロフ) - あッ、待って下さい!何か作品の神度が上がってる!!え、ぽっぽ推しになりたい!(切実) (2020年7月30日 14時) (レス) id: 2de6a67b50 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - $さん» またもやコメントありがとうございます...!ありがたいことにたくさんの人に読んでいただけて嬉しいかぎりです(*´v`*)これからの流れも楽しんでいただけると幸いです! (2020年7月23日 16時) (レス) id: 3018b56d1a (このIDを非表示/違反報告)
$ - なんか、有名になってる…。凄い!!夢主ちゃん、ついに加入…?更新待ってます (2020年7月21日 15時) (レス) id: d5f4fe44f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽっぽ | 作成日時:2020年5月24日 5時