執事40. ページ40
な、何でいきなり…やめるとか言い出して。
じわじわと冷や汗が出てきて気づいたら私は神山の肩を掴んでいた。
『重岡は?重岡は今どこ?』
「本日退職届を出して出て行ったところです」
『なんで?なんで言ってくれへんかったん?』
「重岡が"A様には言わないでほしい"と言っていたので」
"申し訳ございません"と言って頭を下げる神山。
私は慌ててその場を飛び出そうとしたが目の前の神山に引き留められてしまった。
「今行ったって会えません、重岡が出て行ったのは早朝でしたので」
『なんで!!なんでっ!!!!』
「A様!深呼吸してください!」
『重岡!嫌や!!重岡っ!!!!』
あのときの私は頭が真っ白で何も考えられなくて。
暴れる私を必死で支えてくれている神山。
そんな神山にも気が回らないぐらい私は必死だった。
.
それからしばらくして落ち着いた私は自分の部屋に戻って。
そのままどすっとベッドに腰掛けた。
部屋の中で一人になった瞬間、ポロポロと溢れ出る涙。
一度零れた涙は止まることなく頬を伝っていく。
『重岡っ…なんで……』
私に全部くれたのは重岡なのに。
私は重岡に何にも返せてなくて返すどころかあんな突き放し方をして傷つけたのに。
ずっと一人だった私の世界のたった一つの太陽だったのに。
重岡だけが私の気持ちに私の思いにいつも気づいてくれていたのに。
『私…また一人ぼっちになっちゃうっ……』
何で突然黙っていなくなって。
最後に何も言わず目の前からいなくなって。
……会いたいよ、重岡。
『こんな花柄のシーツなんていらない!こんなカーテンなんかいらない!!』
『私はただ…重岡と一緒にいたかっただけやのに……』
重岡が買ってきてくれたシーツもカーテンも全部引き剥がして。
ゴミ箱に捨てようとしたのにそれがどうしてもできなかった。
こんなもの置いて帰らんといてよ。
部屋の中に来る度に重岡のことを思い出してしまうやんか。
ずっとこの思いは封印しようって決めたのに。
もう忘れてなかったことにしようと思ってたのに。
この気持ちに気づきたくなかったのに。
『重岡…私重岡が好きっ……』
私は涙でぐしゃぐしゃになった花柄のシーツをぎゅっと握りしめてひたすらに泣いた。
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りってぃ(プロフ) - のんさん» そう言っていただき本当に嬉しい限りです(T_T)全部作品読んでくださるなんて本当に嬉しいです、のんさんも無理しない程度に作品読んでくださいね(;_;)!お気遣いありがとうございます、これからも頑張ります!(^^) (2020年10月20日 19時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです(;▽;)一気にファンになりました。今からりってぃさんの全作品読んできます!無理なさら無い程度でいいのでこれからも楽しみにしています!お身体にお気をつけてお過ごしください (2020年10月20日 13時) (レス) id: dc321bd858 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - やさきみさん» やさきみさん!(T_T)いつもコメントいただいて本当に励みになってました、再開してからも早速コメントいただいて本当に嬉しい限りです(-.-)!また作品書いていく予定なので良かったら見てくださると嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします!(;_;) (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - サブレさん» 長い間待ってくださりありがとうございます(T_T)今まで気長に待っていただき本当に感謝してもしきれません!昔の作品にも目を通してくださるなんて本当に何と言っていいか(;_;)これからも全身全霊頑張っていきますね! (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - しゅー!さん» ただいまです(;_;)本当に長い間待たせてしまって申し訳ないです(T_T)新作もすぐに更新していくつもりなので楽しみにお待ちください!1年間もの間楽しみに待っていただき本当にありがとうございました! (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りってぃ | 作成日時:2019年8月14日 20時