執事39. ページ39
あれから一か月後。
あの日以来、重岡と話すことはなくなった。
大好きな神山とも一日に何回か会話を交わすだけになった。
「やっぱりウェディングドレスは白の方がええかな?」
『ピンクも可愛いんやけどな〜!やっぱり白がいい!』
「ウェディングケーキはやっぱり大きい方がええよなぁ」
『あ!これがいい!この大きいやつ!!』
それと引き換えに婚約者である望さんとの距離が縮まったような気がする。
結婚式のパンフレットを見ながらどうするか毎日相談する日々。
正直結婚なんてしたくないし結婚式なんて挙げたくない。
でもこの家で育ってしまったばかりこれは仕方のないことだ、みんなだってそう。
≪ 嫌なら嫌ってはっきり言わないと誰にも伝わらないですよ…! ≫
あの日から重岡への気持ちは封印した。
私の中で全部なかったことにした。
「あ、そういえば今度パーティーがあるんやけどAさんも来てくれへんかな?」
『もちろん!望さんとならどこでもついていく!』
思ってもいない言葉を並べて嘘の笑顔を浮かべて。
それでもいいからどんな形でもいいからとにかく幸せになりたかった。
嘘でも楽しくなくてもとりあえず笑っていれば何とかなるだろう。
隣で優しく微笑む望さんにそっと微笑み返した。
.
そんなある日。
結婚式まで残り二週間になろうとしていたときだった。
カレーを作っていると"A様、お時間よろしいでしょうか"という神山の声が聞こえて。
私は慌てて火を消して神山の方へと視線を移した。
「A様、もう少しで結婚式ですね」
『そう、やから結婚してから困らへんように少しずつ家事の勉強もしようと思って』
「なんか…変わりましたね……」
『へ?私が?』
神山とこんな他愛もない会話をしたのは久しぶりかもしれない。
驚く私に神山は"昔のA様に戻った感じがしたので"と言い放った。
『昔の私ってどんな感じ?』
「誰にも心を許していないような素を出さないようなそんな感じですかね」
"この間までたくさん素を出してたのにまた昔に戻った気がします"と言った神山。
私はそんな神山の言っている意味がよく分からなかった。
「それで…大事な話なんですが……」
「重岡が執事をやめることになりました」
そんな神山の言葉に私の頭の中は真っ白になった。
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りってぃ(プロフ) - のんさん» そう言っていただき本当に嬉しい限りです(T_T)全部作品読んでくださるなんて本当に嬉しいです、のんさんも無理しない程度に作品読んでくださいね(;_;)!お気遣いありがとうございます、これからも頑張ります!(^^) (2020年10月20日 19時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです(;▽;)一気にファンになりました。今からりってぃさんの全作品読んできます!無理なさら無い程度でいいのでこれからも楽しみにしています!お身体にお気をつけてお過ごしください (2020年10月20日 13時) (レス) id: dc321bd858 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - やさきみさん» やさきみさん!(T_T)いつもコメントいただいて本当に励みになってました、再開してからも早速コメントいただいて本当に嬉しい限りです(-.-)!また作品書いていく予定なので良かったら見てくださると嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします!(;_;) (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - サブレさん» 長い間待ってくださりありがとうございます(T_T)今まで気長に待っていただき本当に感謝してもしきれません!昔の作品にも目を通してくださるなんて本当に何と言っていいか(;_;)これからも全身全霊頑張っていきますね! (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - しゅー!さん» ただいまです(;_;)本当に長い間待たせてしまって申し訳ないです(T_T)新作もすぐに更新していくつもりなので楽しみにお待ちください!1年間もの間楽しみに待っていただき本当にありがとうございました! (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りってぃ | 作成日時:2019年8月14日 20時