新 人 執 事 ≪ Daiki.S ≫

執事30. ページ30

そんなこんなで長いようで短い一日も終わり。

私はパジャマに着替えてベッドの上に座り込んでいた。









『なんか夜って寂しいな……』



今日はお父さんもお母さんもいない。

シェフとか他の従業員ももう自分の家に帰っている時間。



しーんっとしている空間は私だけしかいないんじゃないか。

そう思うと何だか少しだけ寂しくなった。









あれからしばらく寝ようと頑張ったけど結局寝れず。

一人でいるのが寂しくて怖くて気づけば部屋を出てきてしまったようだ。



分からない、分からないけど。

足が勝手に"執事部屋"の方へと向かっていた。









『あ、あの……』


「あ！A様！！」



ゆっくりとドアを開けば目の前には重岡のキラキラの笑顔。

この人…夜でもこの笑顔なんやな。



そんな重岡は"どうなさいましたか！"と言いながら布団を敷いていて。

奥の方にはもう布団に丸まって眠っている神山がいた。









『ちょ、ちょっと…寝られへんくて……』


「じゃあA様が寝るまで傍にいますよ！」



そう言った重岡はずかずかと部屋を出てきて。

そのまま私の部屋へと向かっていった。









私の部屋のドアをいとも簡単に開けて中に入っていく重岡。

そんな重岡は"寝られへんときって何していいか分からんくなりますよね"と言っていた。








『うん…ごめんね……』


「えへへ、じゃあ俺はここでA様の顔見ときます」



ベッドに寝転ぶ私の隣で椅子を用意している重岡。

いつもタキシードを着ているもんだから不意のパジャマ姿には少しどきっとした。





まさか…部屋までついてきてくれるなんて。

本当は重岡も一日中働いて疲れてるくせに。









「A様、寂しくなっちゃいましたか？」


『夜ってたまにそういう気分になるときあってさ』



そんな重岡の質問にそう答えれば突然ぎゅっと握られた手。

その意図は何なのかよく分からなかったが目の前の重岡はにこにことしていた。









「こうしてれば寂しくないですよ」



そう言って微笑んだ重岡になぜか分からないけどとても安心した。

優しい優しい重岡の手の温もりに何だかとても安心した。









"俺の面白い話聞きます？"なんて言って楽しそうに微笑んでいる重岡。









そんな重岡にも安心して私はそのまま眠りについてしまった。

執事31.→←執事29.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す