新 人 執 事 ≪ Daiki.S ≫

執事15. ページ15

翌日。



日差しが照りつけてきてゆっくりと目を覚ます。

今日は久しぶりにゆっくり眠れたしいい目覚めな気がする。









「ふふふふふ、ふふふ……」


『なんか悪魔の笑い声が聞こえるんやけど』



ゆっくりと目を開ければ目の前にはにこにこした顔の重岡。

そんな重岡は相変わらずの笑顔で"おはようございます！"と言っていた。





今日この部屋にいるのは重岡だけで神山はいなくて。

重岡に聞けば神山は朝食の準備をしているらしい。









「A様！見てください！虹！！虹です！！！」


『ちょっと待って…靴下履きたいから……』



「そんなこといいから早く見てください！！」


『待って待って…この靴下履いてから』



私をゆっさゆっさ揺らしながら窓の外を指指す重岡。

そんな重岡に揺らされながら淡々と靴下を履く私。





なぜ重岡がここにいるのか。

なぜ重岡が今私の隣でぎゃーぎゃー言っているのか。



全ては昨日の出来事が原因だった。









結局あの後は重岡がシャワーを浴びている間に神山の元へ行って。

"重岡を正式な執事にしてほしい"とお願いしたのだ。




そんな私の言葉はたちまちお父さんにも伝わり。

今日から彼は私の正式な執事になった。



正式にといってもまだまだ新人執事には変わりないが。

でもしばらくはこの家にいてもらうことになった。









別に重岡が可哀想になったとかそういうわけではなくて。

ただあのとき重岡が必死に守ってくれたことが嬉しかったからだ。








「あぁ！虹消えてもうたじゃないですか！」


『そんなこと言われても……』



朝から相変わらずうるさい重岡。

そんな重岡とこうして朝を過ごしたのは何日ぶりだろうか。



目の前にいる重岡はタキシードではなくポロシャツ一枚だった。









『今度新しいタキシード買いに行くから』


「え！俺のですか…！！」



『昨日のやつはびしょびしょになってもうたから』


「でもクリーニング出してるのでそれでいいのに…」



何なんや、この人は。

せっかく新しいタキシードを買ってあげようと思ってたのに。



ぷいっとそっぽを向けば彼は"お気に召されましたか…？"と聞いてきた。









『重岡、早く朝食食べに行くで』









そう言って立ち上がれば後ろから"はい！"なんていう重岡の嬉しそうな声。









また新しい日常が始まった気がした。

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