カップ麺と即席麺の食べ比べ ページ7
｢何つくってんですか？｣
｢ん？ムトリ｣
｢へー、これがムトリかあ｣
｢アレ、山本さん知ってる料理？｣
｢うーん、初耳ですね｣
｢なんなん？｣
｢え、じゃあ須貝さんは知ってるんですか？｣
｢うーん、初耳｣
｢なーんだあ｣
まだ数度しか踏み入れていない部屋。台所には余った材料なのか青いバナナ、肉のパック、野菜の端切れなどが置かれている。あんまり料理に詳しくない俺はそれを見ても作成可能な料理が脳内に浮かぶことは無い。隣にいる、俺より知識のあるであろう山本さんも新堂さんの言った料理名に聞き覚えが無いと首を振った。っていうことはドマイナーな料理か。
ふと見ると山本さんは地球に優しくない包装をされた肉を見ていた。オーストラリア産の半額牛肉。聞いてた話じゃ、新堂さんは有名な料理人らしい。検索したら名前が出てくる程度には。でも無知な俺には、プロでもそんな肉を使うんだ、というボンヤリとした感想しか湧かなかった。
そんな新堂さんは目の前の鍋に入っていたスープをかき混ぜながら俺たちにもう一個鍋を出して、と頼む。山本さんの身長じゃ届かない上の棚から大きめの鍋を取り出すと山本さんはふくれた。そんなこともお構い無しに新堂さんは用意していたバナナを全てそこに突っ込み、かき混ぜていたスープを大雑把に投入する。
｢肉とバナナ？なかなか無い組み合わせ｣
｢ベースは一応牛肉やけど、バナナのスープみたいなもん｣
｢あ、結構色濃いですね。黄色だ｣
｢ここから薄くすんねん、まだ火つけたばっかやから｣
｢おん｣
山本さんと2人で興味津々に料理を眺めていたら、2人とも方言出てますよ、クスクス笑われてしまった。どうやら、この小さな早稲田生は意外とツボが浅い。
スープをちまちま入れながら味見をする新堂さんを見ていると、山本さんがこっそり小さなスプーンを2つ持ってくる。俺にも手渡されたそれをバレないように鍋に入れると、新堂さんはすぐに気づいたようで呆れたように笑った。調理者の許諾も出たので2人でスープを口に運ぶと少しの甘さを感じる。なんとも言えない味に首を傾げると、新堂さんがライムと唐辛子を垂らしてくれた。再びスープを口にいれると今度は酸味と塩味が増えて、口いっぱいに美味さが広がった。
｢新堂さん新堂さん｣
｢おん｣
｢これどこの料理なん？｣
｢世界で最も高い独立峰の周辺｣
｢…山本さーん｣
｢キリマンジャロのことです｣
｢キリマンジャロって言ってよ｣
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マサ(プロフ) - また、近頃あまり見なくなった、インターネットを通して読む文章だからこそのギミックも感激致しました。素敵な作品をありがとうございました。長文駄文失礼致しました。 (2021年11月14日 21時) (
レス) id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
マサ(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけて一気に読ませていただきました。全体的に文章自体が読みやすく、私は料理に詳しくないのですがそれでも分かりやすく書かれており、ストーリーも大変面白かったです。 (2021年11月14日 21時) (レス) @page29 id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狭 | 作成日時：2021年6月5日 0時
