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花形切りの愛を添えて ページ21

「早く出てったらどうです?」




「悪口とかじゃなくて…えーと、新堂さん、最近不調続きじゃないですか」




「ただの心配ですって」




「長期休暇か有給とります?俺はそっちの方がいいと思うけど」





「よく考えておいてくださいよ。CEOとしては社員がフルパワーを発揮出来るようにしておくのが義務なんで」




新堂さんは心当たりと罪悪感から目を逸らすようにパソコンに向き直った。その背中にトップとしての言葉をなげかける。結論から言うと、実質的最後通牒はよく効いたようだ。仕事帰りに新堂さんに首根っこを捕まれ、問答無用とばかりにズルズルと連れて行かれる。なんだなんだ、と奇行を笑ってみている同僚達は新堂さんの決意も覚悟も葛藤も知らないからそんな無神経で不条理で愉快な事ができるのだ。


「伊沢クン、迷惑かけたな」

「決めたんですか」

「おん。…ちょいと、お休み頂くことにするわ」

「ひひへふほ」

「はは、何言っとるか分からん!」


俺の口を引っ張ったのはそっちでしょうが。

新堂さんの脳内は俺には分からない。ほな飛行機の時間迫っとるから、なんて軽く手を振って消えた彼が残した休職願が俺の手の中で音を立てて歪んだ。皆はどんな反応をするかな。須貝さんは大きな声で驚くかな。それともこうちゃんか。山本はきっと頬を膨らませて不満そうな音を出すだろう。ご飯を作ってもらう事を約束した、と楽しそうに自慢していたし。河村さんと福良さんは…案外平気な顔をするんじゃないかな。新堂さんが俺の元へやってきた時には、既に知っていたような顔をしていたし。


新堂さんは俺達の道から外れた。戻ってくる時期も、そもそも戻ってくるかも分からない。それでも、世界の中心を料理として生きてきた人間に少しだけ他の楽しみを教えられたのは俺だけの特権で誇るべき功績だ。そう思った。

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マサ(プロフ) - また、近頃あまり見なくなった、インターネットを通して読む文章だからこそのギミックも感激致しました。素敵な作品をありがとうございました。長文駄文失礼致しました。 (2021年11月14日 21時) (レス) id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
マサ(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけて一気に読ませていただきました。全体的に文章自体が読みやすく、私は料理に詳しくないのですがそれでも分かりやすく書かれており、ストーリーも大変面白かったです。 (2021年11月14日 21時) (レス) @page29 id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月5日 0時

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