【QK】酔いどれ天使

人気店の予約は早めに ページ14

本当に新堂さんの料理が好きな人達による、ショックを受けた旨のコメントをSNS上でよく見かけるようになった。同僚兼可愛い後輩という立場にいる僕やこうちゃんなんかは割と新堂さんに甘やかされている節があるので頼んだらおつまみや軽食なんかはつくってもらえるけれど、店が無くなった以上、視聴者さん達がそのご飯を口にすることは出来なくなった訳で。今のところまた店をやる、という話は聞いた事がないので実質的には未来永劫、僕達だけのものになった。

優越感を抱いたのもつかの間、世界の状況は悪くなっていく一方。感染者の数は片手で数えられるくらいだったのが両手になり、3桁を超えるようになってきた。伊沢さんや福良さんなどの主要メンバーは難しい顔をすることが増えてきた。川上さんがいつもより少し低い声で伊沢さんと話し込んでいる。オフィス全体に嫌な空気が溜まっているような気がした。ちゃんと換気はしてるはずなんだけど。
仕事を終わらせて家に帰るでもなく、なんとなくソファに座り込む。小腹が空いた。

｢よっこらしょういち｣
｢…関西人って本当にそれ言うんですね｣
｢個人差有りやけどな。ちょいとオッサンくさいか｣

新堂さんが隣に座ったことで重心がズレた。小腹が空いた、と訴えたけれどコンビニでもいけ、とレスが即座に返される。僕は新堂さんの料理が食べたいのに。飲食店経由の感染を危険視するニュースが流れてきた。2ヶ月ほど前だったら、新堂さんはなんだかんだ言って料理が好きなので文句をブツブツ言いながらも、僕らの知らない料理や冷蔵庫の中にある材料だけで適当な料理を作ってくれる。今はしてくれないそれが懐かしい。

｢…普段なら…｣
｢有為転変っちゅう言葉を知らんのか、漢字王は｣

新堂さんの料理で舌が肥えたことによってそこらの店じゃ満足できないし、自炊も飽きたし。有為転変なんてクソ喰らえな状態。
普段から新堂さんのご飯を食べている河村さんなんて、なんとかご飯を調達しようと躍起になっている。もはや依存状態にしか見えないけれど、それくらい新堂さんの料理が美味しいのは確かだから人のことを指さして笑う様な真似は僕にはできない。

｢あーあ、収束したら新堂さんの美味い飯が食べたいなあ。手をふんだんに使う料理。できればお寿司｣
｢何食いたいかネタ考えとけよ｣
｢やったあ！｣

そんなこんなで、収束していの一番に新堂印の料理を食べるのは僕に決まった。言ってみるもんだね。とりあえず鮪は外せないかな。

食えないなら頼むなよ→←湯剥き失敗したような顔すんな

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