大ちゃんは、俺のだから。-second-【ar×ym】 (ページ13)

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『やっぱり、大ちゃんだった』

「…いの、ちゃん…」

落ち込みながらひとり歩く俺の前に現れたのは

まごうことなき、俺の元彼である

いのちゃんだった。

in 「久しぶりだね。さっきのリレー大丈夫？」

やばい、どうしよう。

普通に日常で話すことは久しぶりで、

すごく戸惑う。

「…大丈夫、だから」

妙な汗が、俺の頬を伝った。

これは走ったからじゃない、絶対。

in 「でも、その怪我はひどいって。楽屋行くんでしょ？ついていくよ」

「ひとりで、いけるから」

in 「何言ってんの？ほら、手当てしてあげるから」

「ホントにいいから…」

いのちゃんといると、まだ苦しい。

早く離れたい一心で、歩きだす。

横を通りすぎたとき…。

in 「あ～あ、大ちゃん、変わっちゃったなぁ」

背後からそう言われ、思わず

立ち止まってしまった。

擦りむいた膝がズキズキと、痛んで、

足が言うことを聞かない。

in 「付き合ってる時は優しかったのに、なんか避けられてるみたいで寂しい」

なに言ってるんだ…この人。

in 「僕、大ちゃんと別れて後悔してるんだよ…。もったいないことしたなぁって」

ゆっくりと、近づいてくる足音。

逃げろ。何か言われる前に。

お願いだから、俺の足、動け。

髪にいのちゃんの手が触れる。

in 「やっぱり僕、大ちゃんのこの髪好きだな。サラサラしてて、大ちゃんにすごい似合ってる」

…ドクンと、胸が音を立てた。

それは俺がいのちゃんの好みになるために

染めた黒髪。

あぁ、やばい。

体が硬直して、呼吸が止まりそうだ。

いのちゃんに触れられただけで、

まだこんなにも心が揺れ動くなんて。

裏切られたことを、忘れたわけじゃねぇのに。

まずいなこれ…ホントどうしよう。

もし。

もしもホントに、ヒーローがいるなら、

今このタイミングで助けてほしいけどな。

ははっ。

頭がうまく働いていないのか、

そんなバカげたことを思ってしまった。

そんなときだった。

━━━パシンッ。

『ごめんね』

何かを弾く音が聞こえた。