QK看病日記

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河村side
何もしないでいると、考えたくないことまで考えてしまって、余計に辛くなる。嫌なことを忘れるためにはどうすればいいかというと、感情を極端に振り切ればいい。思い切り楽しい気分を演出するか、それとも、何もかもどうでも良くなってしまうくらいの痛みを自分に与えるか。

なんとかしたら前を向ける能力が僕にあれば、とっくにその方法を試している。あいにく僕はそれが苦手なので、いつも自分を負の方向に引っ張り込んでしまう。こればっかりは幼い頃からの性格だから仕方がない。

動画に出ることも多いから、最近は控えてたんだけどな。引き出しの奥に封印していたカッターを手に取り、ゆっくり刃を出す。仕事を休んでまでやることがこれなんて、口が裂けてもメンバーには言えない。

「……ッ、」

手首だと跡が残ったときにすぐバレそうだから、もう少し手前に刃を当てて滑らせた。この程度の傷では死なないのはわかっていても、もちろん恐怖心はある。不自然に真っ直ぐに引かれた線から、赤い液体が滲んだ。



福良side
明日は行けそう、と一言だけのメッセージが送られてきたのが昨日。河村は10日ほど休暇を使った後、一週間は在宅勤務をしていた。最初の頃は音信不通気味だったけど、休暇の後半は電話とLINEは頑張ってくれていた。

「……おはよう」

「お、おはよう。久しぶり」

「ん、」

今日は河村への気遣いもあって、オフィスに来る人はいつもより少ない。思っていたよりも早く来た河村は、休暇明けとは思えないくらい自然な様子でデスクにパソコンを広げた。

完全に回復したって解釈していいのかな。普段は復帰初日は夕方ちょっと顔出して帰るって感じだから、なんとなく腑に落ちない気もするけど。

「急ぎの仕事はないから、無理しなくていいからね」

俺のほうを見ずに頷く。その違和感の正体を見破れないまま、俺も手元の資料に視線を落とした。

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