・ ページ27
伊沢side
福良さんに言われてしぶしぶ布団に入った。早起きは苦手だから、福良さんが寝たら仕事を再開しようと思っていたのに、気づいたら眠ってしまっていた。
「ぅ、」
しばらくして、突然の胃の不快感で目が覚めた。慌てて体を起こし、トイレに駆け込む。
「けほっ、うっ、ごほ、」
夕飯もろくに食べていないため、すぐに胃の中は空っぽになった。それでも気分はすっきりせず、便器に顔を埋めたままでいた。
「……伊沢?」
後ろから名前を呼ばれたが、振り返る余裕もなかった。とん、と背中に手が触れて、そのままさすってくれる。
「ふく、らさん……?」
「うん。突然飛び起きてどっか行くからびっくりしたよ……」
少し落ち着いてから振り返れば、寝起きの福良さんと、開け放ったままのドア。トイレの鍵も閉め忘れるほど慌てていたんだと今更自覚した。
「水持ってくるからちょっと待ってて」
すぐに戻ってきた福良さんから、コップの水を受け取る。胃液のせいか苦かった口の中を何回かゆすいだ。
「はぁ……」
「大丈夫?吐き気は落ち着いた?」
「、たぶん……」
福良さんはずっと背中をさすってくれていた。その安心感からか、気が抜けた瞬間にふっと涙がこみ上げてくる。
「伊沢……?」
「っく、なんでも、なぃっ、」
「そんなに泣いてて、何でもないわけないでしょう」
とりあえず移動しよっか、と言われて立ち上がる。支えてもらいながら布団まで戻った。
「最近忙しかったもんね」
「……ん、」
「あれだけ仕事してたらそりゃ疲れもたまるよ」
どうしたの?とか、なんかあった?とか、そういう言葉から始めないあたり、やっぱりずるい。いつもの雑談みたいに、つい素直に言葉をぶつけてしまった。
「……っでも、」
「ん?」
「俺がやらなきゃ……俺がもっと頑張らなきゃ、いけないっ、から……っ」
「うん」
「カッコ悪いとこ、見せたくないしっ、だって俺、クイズ王、名乗ってんのに、っ」
「うん」
「会社っ、社長、なのにっ」
こんなこと福良さんに向かって言うことじゃないのはわかっていた。でも、一度口を開けば心に閉じ込めてあった弱音ばかりが漏れて、もう止める事はできなかった。
459人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪月花 - すいません、どうしても分かんないです。色々有名そうなのを入れてみて全部出し尽くしちゃったんです。ヒントとか貰ったり出来ませんか? (6月18日 20時) (レス) id: a76a285c93 (このIDを非表示/違反報告)
NaHo(プロフ) - あの手この手で色々調べてみたんですが全くわからないので教えてくださいお願いします🙇🏻♀️ (2023年2月15日 23時) (レス) id: 45b193f19a (このIDを非表示/違反報告)
あくと(プロフ) - 頑張って考えたんですが続編のパスワードが分からなくて...ヒントなど頂けたりしませんか?お忙しいと思いますが返信頂けると嬉しいです (2022年3月11日 18時) (レス) id: ab17c965b8 (このIDを非表示/違反報告)
White - すごくおもしろくて2も読んでみたいな、と思ったのですが、ヒントをみて、思いつく数字を片っ端から入れても、どんなに調べても分からなくて、もう少しヒントを頂けませんか? (2021年10月31日 20時) (レス) id: 276347c53c (このIDを非表示/違反報告)
s.u - 私は、有名な4桁数字と調べたら出て来て、あ〜これか〜!ってなりました(今さらすみません) (2021年9月29日 20時) (レス) id: 4835169485 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:泉怜 | 作成日時:2019年9月21日 23時