けじめ ページ5
「けじめって大事だよね。」
萩原は女形になりとある場所へ来ていた。
真新しい花が手向けられている“それ”の前にしゃがむとそっと手を合わせた。
「久しぶり、人間の俺。」
“萩原家之墓”と彫られた墓石に向かって話しかけるその顔は複雑そうに歪んでいた。
「ここに来たらさ、嫌でもお前は死んでて俺はもう人間じゃないってわかるんじゃないかなってバカなこと考えてたんだけど……
こんなの見たら人間やめたくなくなっちゃうよ。」
萩原の目には丁寧に掃除され草1つない墓と備えられたばかりの花がうつっていた。
それを見ればポロポロと涙が溢れ落ちる。
「愛、されてたんだなぁ、俺……
何で、死んだんだよっ」
合わせていた手を離しごしごしと目を擦る。
それでも涙は止まらなくて死んだ瞬間の恐怖や痛みやり残したことの後悔、自分を殺した相手への恨みが一気に思い起こされた。
「その思い出があるから俺は朱雀さん達を止められないんだっ
だって俺は彼らの思いが痛いほどわかるから……」
止まらない涙に唇を噛んで耐える。
その時後ろに気配がした。
懐かしいタバコの香りと暖かい霊力に萩原は勢い良く振り向いた。
相手は驚いたように肩を揺らしたあと萩原の顔を見ておどおどとしはじめた。
それもそうだろう。
友人の墓参りに来てみれば知らない女が泣いているのだから。
「あっと……
大丈夫か?」
こんなときでも敬語は使わない幼馴染みに萩原は涙が止まり嬉しそうに笑った。
「うん、見苦しいところ見せちゃったな。
私は萩仁美(はぎ ひとみ)だよ。」
「松田陳平だ。
ところでそいつとどういう関係だったんだ?」
松田は萩原の墓を指差して言う。
「ひとことでは言えないな……
でも強いて言うなら
私は彼の守りたかったものを守るためにここにいるってこと。」
萩原の言葉に松田は眉を寄せる。
顔には意味がわからないとはっきりとかいてあった。
「今日はね、けじめをつけるためにここに来た。
今日あなたにあえてよかったよ。」
7年の時を進んだお前をみて嫌でも世界が違うってわかってしまったから。
笑顔を浮かべて立ち上がりまっすぐに松田を見てから口を開く。
「ありがとう。
あなたが萩原研二の友達であったことが彼の人生で1番の誉だよ。
じゃあね、また会おう。」
松田の返事も聞かずに萩原は降谷の元へと歩きだした。
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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします! (2018年10月15日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
泉 - とても面白いです!更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吹雪 燐 | 作成日時:2018年10月2日 20時