9.好き、嫌い、だいすき ページ9
「あのなA。俺はお前に言いたいことがある」
「なんですか?」
「いつの間にあんな万事屋の旦那と仲良くなってんでィ」
何かと思えばそんなこと。
やけに神妙な面持ちで訊いてくるものだから、堪えていた笑みが思わず漏れてしまう。
「何がおかしいんでィ」
「いやいや、別に」
心配症だなあと思って。とはさすがに言わない。言えるはずもない。
というか、銀さんと仲良くなったのは万事屋さんに依頼をするようになったからで、依頼をするようになったのは、元を辿ればきっかけは沖田さんなのだ。
「心配しなくても大丈夫ですよ。銀さんはお友達なので」
「そういうことを言ってんじゃねェ。あんなナマケモノみてェな毛むくじゃらと仲良くしてたらお前が影響されちまうだろ」
「シンプルに悪口ですね。毛むくじゃらって……」
銀さんには、私が買いにくいもの、手に入れにくいものを代行して貰っているだけだ。それ以外の依頼はしたことがない。
絶対に沖田さんには教えてあげないけれど。
「……コソコソ仲良しこよししてたら、俺が妬くだろーが」
「妬いてるんですか?」
「まァな」
「へえ」
「ニヤニヤしてんじゃねェ」
「沖田さんのせいですよ」
ちゃんと好いて貰っている。その事実が自信になり、この男所帯の中でも生きていこうと思う糧になる。
気にするだけ無駄だと分かっているのに、どうしても他人に嫌われたくないと思ってしまう。
気にしすぎな私の性格を見越してなのか否かは定かではないけれど、この沖田さんの態度はとても分かりやすく、有難い。
私の扱いをよくわかっている。
「……A、言っとくが俺がお前ェを嫌いになることはまずねェ。覚えとけ」
「なんですか急に」
私の心情を読み取られでもしたのか、というタイミングにドキドキしていると、すっと手を取られる。
「俺は嫌いな奴の爪を塗ったりしねェ」
それから指先に軽く口付けられ、びっくりしてぱっと手を引っ込める。
「その色が続く限りは、お前のこと嫌いじゃねェから」
「…………ありがとうございます」
わかりやすく、励まされている。
私の性格を理解されすぎている。
こういうところが本当に面倒見が良い。
沖田さんは何でもないようにそのまま先に歩いていってしまうから、堪らなくなって、その背中に飛びついてやった。
「……ありがとうございます、沖田さん。私も、」
『沖田さんのことだいすきですよ』
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時