45.チーズケーキがチーズケーキでなくなる頃に。 ページ45
「俺、気づいちゃったんだけど」
「何をですか?」
「……Aちゃん、盛大な隠し事してね?」
「盛大な、とは」
「俺だけに隠してんじゃなくて、もっとこう、規模がでかいっつーの?もっと他の人にも隠してて────例えば、自分にも、とか。」
「……。」
返事をしないことを銀さんがどう受け取ったのかはわからない。
自称、私の親である銀さんは、私が思っているより私のことを見ている。……気づいている。
ただ、この人は優しいから、それ以上踏み込もうとしない。だから、気づいてはいるけれど、それが何なのかは、わからない。
そんなふうに、見えた。
「……私の本当の親は、私のことを見てくれてたのかわからないうちに、私を置いて行きましたけどね」
「お空に?」
「はい」
「あっそ。何か納得した」
「何がですか」
「土方とか沖田の過保護っぷりが」
「過保護ですか?」
「まァそうだな、土方に関しては"親"っぽい過保護だが。……沖田はそんなことねェけど」
「……」
また、黙る。
銀さんは、私のことをじっと見ているのだろうか。何せ私は、顔を伏せているからわからない。
もしかしたら、物欲しそうに私の残ったチーズケーキを見ているのかもしれないし。
パフェのお代わりをしようと、店員さんを探しているのかもしれない。
「全部聞いて欲しい?」
「……全部?」
頭を掴まれて、ひょい、と顔を上げさせられる。
それから、既に食べ尽くされたパフェの容器と、まだ半分も残っているチーズケーキを並べて。
空になったパフェの容器を、スプーンでかつん、と鳴らす。
「Aちゃんが隠してること、もう隠すのに疲れたこと。部外者の俺に、全部ぶちまけるっつー選択肢がひとつ。」
チーズケーキの乗ったお皿に、こつこつとスプーンをぶつける。
「それか、全部自分の腹の中に押し込んで、へらへら笑う?それも選択肢のひとつだぜ、お巡りさん。」
「私は、」
────半分残ったチーズケーキにフォークを突き刺して、口の中に放り込む。
もぐもぐもぐ、と咀嚼して、嚥下。
「全部飲み下します。このチーズケーキみたいに。」
乾いた喉を、水を飲んで喉を潤す。
「消化も終わって、そのうち、食べたことも忘れるくらいになったら、銀さんに全部お話します」
「そんな義務的に話せ、って言ってる訳じゃねェよ?」
「わかってます」
────これは恩返しですよ、銀さん。
そう笑って見せた。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時